"洋食屋の絆と、高級寿司屋の逆転" 第1話
のくたい空気の、私はについたエンジンオイルと鉄の混ざった黒い汚れを、ボロ布で何度もゴシゴシと拭き取っていた。爪のに染み込んだ汚れは、どれだけ鹸で洗っても完全には落ちない。それが、自の備士としてきる私の誇りであり、常の証でもある。 私の名は岡田悠斗、歳、独。普段は自メーカーのディーラーで、の臓部であるエンジンや回りと向きう々を送っている。に触れ、調の原因を見つけし、再び滑らかにるように直していくこの仕事が、私はから好きだった。自分の技術でが蘇る瞬に、何物にも代えがたいやりがいをじていたのだ。
だが、世般の物差しで見れば、私のき方は決して華やかなものではない。卒でこの世界にび込み、朝から晩まで汗と油にまみれて働く肉体労働者。オフィスでスーツを着てパソコンを叩くたちから見れば、私は「底辺の職」に映るのかもしれない。実際に、職の営業部には、そうした学歴や職業の偏見を骨に態度にすもいる。 そんな私にとって、唯にして最の誇りであり、きる支えだったのが、歳の妹である真央(まお)のだった。両親をくにくした私たち兄妹にとって、真央は文字通り命よりも切な族だった。
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その真央が、学を卒業し、厳しい司法試験を突破して弁護士になり、ついに初任をもらったというのだ。 「お兄ちゃん、私の初めてのお料で、何か美しいものをご馳させてね」 そう言って話ではにかんだ真央の嬉しそうな声をいすだけで、私の胸の奥は温かいもので満たされる。今の夜、私たちは駅にあるし級な寿司で待ちわせをしている。社会としての歩を踏みした妹のれ姿を祝い、これまでの苦労をねぎらう、切な、本当に切な事の席だった。
今からえば、私たちの原点は、駅のさな商の角にあった。 私たちの両親は、そこで「ひまわり」という名のさなを営んでいた。そのは、いつの代も元の々で活気に溢れていた。 「ひまわり」の内は決して広くはない。カウンター席がつと、掛けのテーブル席がつあるだけだった。けれど、そこにはいつも温かな笑顔と、欲をそそるばしい匂いが満ちていた。父さんが作るデミグラスソースのハンバーグ、母さんが揚げるサクサクのエビフライ、そして盛りのオムライス。くて、美しくて、ボリューム満点。学、サラリーマン、所のお寄りまで、たくさんののお腹とを満たす、まさにのオアシスのような所だった。
父さんも母さんも、お客さんが美しそうに料理を頬張る姿を見るのが何よりも好きだった。 「悠斗、見てみろ。あのお客さん、オムライスをあんなに美しそうにべてるだろう」 カウンターの向こう側で、父さんは額の汗をいタオルで拭いながら、嬉しそうに目を細めて私に言ったものだ。 「ああいう顔を見るとさ、料理やってて本当によかったっての底からうんだよ」 「お父さんたら、またそんなこと言って。でも、本当にそうね。お客さんの笑顔が、私たちの何よりの宝物よ」 母さんはエプロンのポケットから取りしたメモ帳に今の仕入れの計算をき込みながら、優しく微笑んでいた。
本当に、あの頃の私たちは世界で番幸せだった。は自宅から歩いて分ほどの距にあり、学から帰ると、私はランドセルを玄関に放りすようにしてってへ向かった。厨の簾をくぐると、父さんがいつも優しい笑顔で迎えてくれた。 「お帰り、悠斗。今は特製のプリンを作ったぞ。おの好物だろう」 「やったあ! 父さんのプリン、世界美しい!」 「そうか、そうか。じゃあ、めるにくいなさい」 甘くて滑らかなプリンのは、今でも私の舌の記憶に鮮に残っている。
私が学になるまでは、歳の妹である真央のをしっかりと引きながら、夕方の商を歩いてに通うのが課だった。
「お兄ちゃん、お腹空いた! おにこう!」