"実家のオンボロ工場を笑った次期社長を54階へ案内した" 第6話
会議の罠
ある、私が会議用の資料をパソコン画面で確認していると、経理であり元の取り巻きである加賀さんが私の元にやってきた。
加賀さんは周囲をちらりと確認してから、ボソッと呟いた。
「ページ目のところ、誤字がありましたよ」
私は画面から顔をげ、加賀さんを見た。
「ダサ」
加賀さんは吐き捨てるようにそれだけを言うと、自分のデスクに戻っていった。私が部になっても、元や取り巻きには関係ないらしい。ただ、違いを教えてくれたことには謝すべきだ。
私はマウスを操作し、指摘された誤字を修正した。使っているソフトは編集が入るとその都度自保されるので、で保する必はない。この設定があるおかげで、急にソフトが落ちても作業が無駄にならないので便利だ。
誤字を修正した私は、資料を印刷して会議へと向かった。
会議には役員や各部署の責任者が集まっていた。社の席には、就任したばかりの元がふんぞり返って座っている。
私はプロジェクターにノートパソコンを繋ぎ、スクリーンに資料を映しした。
「これが、半に販売を始した材の状況をまとめた表です」
私はレーザーポインターでスクリーンを指し示しながら説を始めた。
「こっちの項目が予算計画でした数字で、その横が実際の結果です。
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概ね計画通りの売がています。ただ、ライバル会社から似た製品がるので、これからは予よりも売が落ちる能性があります。そのため、営業の化と売り込みの見直しが必になるでしょう」
私は予算管理の業務でまとめた捗状況や分析結果を、会議の参加者たちに淡々と説する。参加者たちは元に配られた印刷した資料に目を通したり、スクリーンを見たりして私の説にを傾けている。
これは例の定例報告なので、特に質問ががることもない。みんな「こういう状況か」と聞き流すところだ。しかし今は珍しく、質問のががった。
「なあ、ちょっといいか」
をげたのは、社である元だった。
「はい。何でしょう?」
私はポインターをろし、彼を見た。彼は以から私には敬語を使えと言い続けられていた。それは無してきたのだが、彼は社になってからも「敬語を使え」としつこく言ってきた。さすがに社となり、社の言っていることを無するのは悪いとって、最は折れて敬語を使うようにしている。どことなく屈辱をじるのは気のせいではないだろう。
「この数字、おかしくないか?」
元は元の資料を指差しながら、悪な笑みを浮かべた。
「え、どこの数字ですか?」
「売の部分だよ。おが配った資料とスクリーンの数字が違うぞ」
私は眉をひそめた。
「そんなはずは……」
私はくに座っている役員の資料を見せてもらった。数字を確認すると、確かに数字は異なっていた。スクリーンに映っている数字よりも、元の印刷された資料の数字の方がさいのだ。
しかし、資料にかれた方の数字に私は全く見覚えがない。
私は元の資料とスクリーンを見比べ、を回転させた。どうやら何者かに資料を差し替えられてしまったようだ。こんなことをするのは元しかいない。おそらくみんなので数字の違いを指摘して、社として私のことを注することで、周りからの評価を落とそうとしているのだろう。
そうっていたのだが、元は社になり、今までよりも社内で絶対な権力を持ったことから、ついに線を越えてきたのだ。
「うっかりボロをしてくれたみたいだな。こっちとしてはやりやすくて助かるよ」
元は腕を組み、勝ち誇ったような顔をした。
「え?ボロって何のことですか?」
私は聞き返した。
「このきい数字の方が正しいんだろ。でもおはさい方の数字を報告してる。この差額のはどこにったんだ?」
「いや、どこにったも何も。これはただ数字が違っているだけで、おが消えたわけでは……」
「実際に消えてるんだよ!」
元は机をバンと叩き、声を荒らげた。
「こっちで調査させてもらって、そういう結果がてるんだ。会社から消えたと、この資料の差額が致してるぞ!々からおが怪しいとってたんだ。お、会社のを着してたな!」
会議が静まり返った。私は目を見き、元を見つめた。
「着?そんなこと、するわけないじゃないですか!」
「な、調べはついてるって言っただろ。それに決定な証拠を、お自が見せてくれたじゃないか。資料は印刷のタイミングをミスったのか?お、どれだけのを盗んできたんだ」
元は本気でっているふりをしながら私を睨んでいる。さすが演技がうまい。周りの参加者たちは、彼の迫真の演技に騙されているのか、それとも関わりいになるのを恐れているのか、誰もをかない。「普段ならそんなことするじゃないでしょう」と誰かが言ってくれそうなものだが、会議には「もしかして本当なのか」という空気が漂い始めている。
私はの潔を示すために、急いでノートパソコンを操作した。私の作った資料は社内で公されるものなので、ファイルはサーバーにあり、誰でも見られるようにしてある。誰かが違って編集しないように、いつも会議が終わったに閲覧専用の設定にするのだが、作成は誰でもき換えも能な状態だ。
私は資料の数字を見たことがないので、誰かがき換えて印刷したに、再び数字を戻したということだ。この資料を作ったソフトは編集すると自で保され、最終更者の名が記録される。
私はそのプロパティ画面をき、スクリーンに映しした。
「見てください。最終更者は……」
言葉が途切れた。更者の名は、私になっていた。
「更者の名は、おじゃないか。これで確定だな」
元が笑する。
「いや、そんなはずは……」
私は画面を見つめ、ハッとした。
「あ、しまった」
私は会議の直に、加賀さんに指摘されて誤字を直したことをいした。あの誤字の指摘は、私を最終更者にするために仕込まれた罠だったのかもしれない。そう考えると、誤字のことを教えてきた経理の加賀さんが怪しい。
また、やっていない着を「やったこと」にして数字をわせるには、経理の協力が欠だ。加賀さんは元の指示で、私にこれらの罠を準備したのだろう。
彼は社になりできることが増えたことで、それらを悪用して私を会社から完全に追いすことにしたようだ。まさか彼が、犯罪の濡れを着せるというここまでのことをするとはっていなかった。
「待ってください。ちゃんと調べてもらえば、私が犯でないことが分かるはずです」
私は必に訴えかけた。
「はいはい。分かったから」
元は面倒くさそうにを振った。
「じゃあもうし調べたで、おには結果を伝えることにするよ」
私は唇を噛み締め、何も言えなかった。