みかん小説
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"廃業寸前の豆腐屋に来た東大院卒の母親" 第3話

午分の仕込みとしい従業員

翌朝。

まだが真っ暗なに、俺は目を覚ました。

の習慣で、目覚まし計が鳴るに体が勝に起きがる。

布団からいし、壁の計を見た。

午分。

の朝は、底えがする。

俺はのフリースを羽織り、階段へ向かった。

いつものように、ギシギシと鳴る階段を段ずつりる。

階の舗部分にを踏み入れただった。

の奥の厨から、かすかな物音が聞こえてきた。

がねる音と、何かをこするような音。

棒か。

俺は構え、息を殺して厨へづいた。

かりの、誰かが作業台に向かっていている。

俺は、壁のスイッチを探りで押し、かりをつけた。

蛍灯が点滅し、やがてるいが厨を照らす。

そこにいたのは、昨夜の女だった。

女は、エプロン姿で作業台をスポンジで懸命に磨いていた。

「何してる?」

俺は、驚きのあまりし声を荒げてしまった。

女が、ビクッと肩を震わせて振り返った。

「おはようございます」

女は、スポンジを持ったまま々とをげた。

「おはようじゃねえ。こんなに何やってんだ」

俺は、困惑しながら辺りを見回した。

「昨、朝はいって仰ってましたから」

女は、し申し訳なそうに言った。

見ると、普段は回しにするような作業台の隅々まで、綺麗に拭きげられている。

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の撒きも終わり、先の掃除まで済んでいるようだった。

「頼んでねえだろう」

俺は、ため息をついてを抱えた。

「泊めていただいたので、これくらいは」

女は、しだけ誇らしげに言った。

「娘は?」

俺が聞くと、女は階の方へ線を向けた。

「まだ寝ています。静かに起きてきました」

俺は、何も言わずに自分のエプロンをに取った。

で紐をきつく結び、靴を履く。

「邪魔にならないようにしますから」

女は、壁際に寄ってさくなった。

俺は、槽のにち、仕込みの準備を始めた。

豆を洗い、に浸す。

の勘で、の量と温度を調する。

しばらく作業を続けていると、女がスッと俺の横にった。

「何か、伝わせてください」

女の目は、真剣だった。

俺は、をかしたまま横目で女を見た。

「豆腐、作ったことは?」

「ありません」

女は、きっぱりと答えた。

「じゃあ、邪魔するな」

俺は、たく言い放った。

「はい」

女は、素直に引きがった。

再び壁際でじっと俺の作業を見つめている。

ところが、分もしないうちに、女がいた。

「これは、どこへ運びますか?」

女は、俺が洗い終わったばかりの容器を持ちげていた。

「そっちの棚」

俺が顎でしゃくると、女は無駄のないきで容器を運んだ。

「この容器は洗って、そこですね」

女は、俺が次に必とするものを先回りして準備し始めた。

言われたことを、次々と片付けていく。

際は悪くない。

いや、むしろ初めての厨とはえないほど、きに無駄がない。

なくとも、楽をしようとして仕事を探している女には見えなかった。

俺は豆をすりつぶす械をかしながら、女を見た。

「仕事、探してるんだったな」

俺の言葉に、女のがピタリと止まった。

「はい」

女は、容器を置いたままこちらを振り向いた。

「いつまでに見つけるつもりだ」

俺は、械の音に負けないようにし声を張った。

「できれば、すぐにでも」

女は、自分のをぎゅっと握りしめた。

「むところも」

しがあった。

「はい」

女の顔に、再び昨夜公園で見たのがよぎる。

俺は、すりつぶされた豆をかき混ぜながら、を向いたまま言った。

「だったら、しばらくここで働くか」

女が、息をむ気配がした。

「階も、使っていい」

俺は、械のスイッチを切り、女の方を振り返った。

女は、目を見いて俺を見つめていた。

「本当に、いいんですか?」

女の声は、震えていた。

「勘違いするな。助けじゃねえ」

俺は、ぶっきらぼうに言った。

「掃除、番、配達。何でもやってもらう」

俺は、女の目から線を逸らさなかった。

「朝はだ。子供がいるからって、特別扱いもしねえ」

厳しい条件を突きつけたつもりだった。

だが、女の返事は髪を入れずに返ってきた。

「構いません」

女の目には、い志のが宿っていた。

「料だって、した額はせねえぞ」

俺がを押すと、女はくをげた。

「それでも、お願いします。働かせてください」

顔をげた女の頬に、涙が筋伝い落ちるのが見えた。

俺は、黙って槽の方へ向き直った。

「美咲(みさき)です」

ろから、女の声が聞こえた。

「私は、美咲と言います」

俺は、振り返らずに豆をかき混ぜた。

「俺は神だ。修でいい」

こうして、俺は美咲をみ込みで雇うことになった。

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