"高卒エースを掃除係に落とした無能社長" 第13話
信じてくれるたち
「会が……社に?」
俺の問いかけに、部は肩を激しくさせながら頷いた。
「ああ! 会が君の退職届の件をって、これまでに見たこともないほどの激をされたらしい! 『なぜが社のかけがえのない黒柱を追いすような真似をするのか』と……今、社に倉島社を呼びつけ、の尋問がわれているんだ!」
フロアの社員たちが、仕事を完全にからし、青ざめた顔で社のある方向を見つめていた。
普段は温そのもので、病となってからは数もなくなっていた矢吹会が、霆(らいてい)の如くり狂っている。その事実だけで、社内全体に激震がるには分すぎた。
そして、そのの夕方。
窓のが茜の夕焼けに染まり始めた午過ぎ、俺のデスクの内線話が鳴った。
受話器を取ると、聞こえてきたのは、微かに息を荒げた矢吹会の直々の声だった。
『……篠田君か。すまない、今すぐ私の会に来てくれないか』
「かしこまりました。すぐに向かいます」
俺はジャケットを羽織り、最階にある会へと向かった。
厳な防音扉をけてに入ると、部のには沈痛な空気が漂っていた。
窓際に据えられた子ので、矢吹会はく息を吐きながら、元のサイドテーブルに置かれた分いファイルをじっと見つめていた。
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「失礼いたします。会、お呼びでしょうか」
俺が歩み寄ると、会はゆっくりと顔をげた。その目には、い疲労と、それ以に激しい悔のが宿っていた。
「篠田君……本当に、すまなかった」
番、会はそう言って、子のからくをげた。
「すべて、調べさせてもらったよ。私の息のかかった監査役と事のベテランを使って、君の過の営業記録と、倉島が提していた報告資料を徹底に突きわせた」
会は震えるで、テーブルののファイルを叩いた。
「君の先の成績は……やはり部内最位などでは断じてなかった。それどころか、全社トップだった。倉島は君の確定売の数値を図に操作し、桁をつ違えたように見せかけて数字を握りつぶしていたんだ」
「……やはり、そうでしたか」
「それだけではない。君に対する社の清掃や雑用の押し付け、取引先とのアポイントメントの図な変更……すべてが、君を追い詰めるために仕組まれた悪質な営業妨害だったことが、秘のスケジュールログと通話記録から完全に裏付けられた」
会の拳が、ワナワナと激しく震えていた。
「そして……キッズドリームとの契約だ。倉島が直接先方の社に話を入れ、『条件をめない』と方に突っぱねた音声データまで、先方の法務部を通じて回収した。
……あいつは、が社の将来を担う百億円のプロジェクトを、君へのらない嫉妬のためだけに、故に破壊したんだ」
会の瞳から、ボロボロと粒の涙が零れ落ちた。
「こんな……こんな貴な材を、こんな理尽な形で組織から追いそうとするなど……経営者として、万に値する暴挙だ。篠田君……倉島には、厳罰をす。今このの臨取締役会で、あいつの社解任議を提する筈をえた」
会は力い差しで、俺のを両で包み込んできた。
「だから……退職を撤回してくれないか、篠田君。この会社には、君が必なんだ。もし君が残ってくれるなら、私が責任を持って君を営業担当の取締役に抜擢する。君の腕で、もう度このアイリストイをて直してほしいんだ!」
取締役への抜擢。
歳、卒の叩きげ社員に対する、異例の異例の破格の待遇だった。
矢吹会の誠と、俺に対する絶な信頼が、痛いほど胸に突き刺さった。
だが――。
俺は会の温かなを、そっと、しかし毅然とした態度で押し戻した。
「……会。に余るお言葉、本当に、から謝申しげます」
俺は真っ直ぐに会の目を見つめた。
「ですが……申し訳ありません。私の決は、もう変わりません」
「篠田君……」
「私は、すでにライジングトイ様からの移籍のオファーをお受けすることを決めました。
あちらの経営陣は、倉島社からの当な圧力に屈することなく、私のこれまでの仕事と実力を信じ、受け入れてくれました。その恩義に、私は応えなければなりません」
会は絶句し、痛ましい表で唇を震わせた。
「それに……今のアイリストイは、倉島社の独裁と恐怖政治によって、社員同士が疑暗鬼になり、保のために互いを裏切りう組織に成りがってしまいました。そんな沼のに残って役員の子に座るよりも、私はしい所で、の営業として、もう度子供たちの笑顔のために汗を流したいのです」
静寂が、会を満たした。
やがて、矢吹会はく、い息を吐きすと、力なく背もたれに体を預けた。
「……そうか。君の言う通りだ。組織をここまで腐敗させてしまったのは、私の監督き届きだ。……君のような至宝を失うことこそが、私の経営者における、最の、そして取り返しのつかない失敗だよ」
窓のでは、完全にががり、茜の空の彼方に番が瞬き始めていた。