"高卒エースを掃除係に落とした無能社長" 第4話
暗転とたい線
すべてが狂い始めたのは、半ののことだった。
会社の精神支柱であった矢吹社が、過労と脳梗塞の発作により突然倒れた。命は取り留めたものの、子活を余儀なくされ、経営の第線からを引かざるを得なくなったのだ。
社退任の、矢吹社は社で、悔しそうに拳を震わせながら俺にをげた。
『篠田君、本当に申し訳ない……。私の体が、こんな体たらくでは……君たち現の盾になってやることができん』
『滅相もありません、社。どうかお体をお事になさってください。会社の業績は、私たちが必ず守り抜きますから』
俺は必に笑顔を作って答えた。矢吹社が俺に謝る理由など、どこにもなかったはずだった。
だが、そのに臨取締役会を経て社に就任したのが、当営業担当役員だった倉島哲也だった。
就任初から、倉島の俺に対する態度はあからさまだった。
以からどこかよそよそしい態度は取られていたが、社の子に座った瞬から、その遇は目に見える暴力となってエスカレートしていった。
『社、製品の育シリーズに関するプレゼン資料を作成いたしました。事にご確認いただけますでしょうか』
『にしてくれ。今、な経営戦略の策定で忙しいんだ。
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君のような営業の細々とした案件に構っている暇はない』
声をかけても、パソコンのモニターから目をそうともせず、たくあしらわれる。
の社員――特に名私学をた若や、自分にゴマをする取り巻きの幹部たちに対しては、わざとらしく柔な笑みを浮かべて「期待しているよ」などと声をかけるくせに、俺に対してだけは徹底して淡だった。
なぜ、そこまで俺を目の敵にするのか。
その理由の端をったのは、事部に所属している同期の古い友から、居酒で酒を酌み交わしたに打ちけられた話だった。
『篠田、お、倉島社に気をつけてるか? ……実はな、社内のごく部のしからないんだが、倉島社も元々は方の商業、つまり卒なんだよ』
ビールのジョッキを置いた友は、声を潜めてそう囁いた。
『え……社が?』
『ああ。だが本はそれを恥じて、に物狂いで夜学に通って、無理やり卒の肩きをに入れたんだ。だからこそ、あのは学歴に対するコンプレックスが常の何倍もいんだよ。……そんなから見てみろよ。同じ卒の自でありながら、夜になんか通うこともなく、営業現で叩きげられて全社トップをり続けているおのが、どれだけ目障りか』
友はため息混じりに焼き鳥の串を置いた。
『おまけに、先代の矢吹会が事あるごとに「篠田君を見習え」「学歴ではなく現の誠実さだ」っておをがっていただろ? 倉島社にしてみれば、自分のコンプレックスの塊を毎目のに突きつけられているようなものだったのさ。「卒の篠田なんかに負けるはずがない」って、昔からで執拗に対抗識を燃やしていたらしいぞ』
その話を聞いた、俺はただただ呆れるしかなかった。
コンプレックス? 対抗識?
そんなもののために、俺を目の敵にしていたというのか。
俺たちは社内で勝ち負けを競う敵同士ではない。同じ会社の板を背負い、子供たちに良いおもちゃを届けるために力をわせる仲のはずだ。なぜ組織のトップが、社員に対してそんならない私怨を燃やす必があるのか。
だが、あの会議での倉島の歪んだ笑顔をいすと、すべての点と線が嫌な形で結びついてしまうのだった。
何の根拠もなく「落ちこぼれ」の烙印を押され、全部員ので晒し者にされた屈辱。
俺はデスクの引きしから、先の売管理ファイルを取りした。
自分ので打ち込み、プリントアウトした確定数字の控えがファイリングされている。
先の確定売、億千百万円。目標達成率、百パーセント。
違いなく、第課どころか営業部全体でダントツの首位の数字だった。
「これが、落ちこぼれの数字だと言うのか……」
自嘲の笑みが漏れた。
評価基準も事実もへったくれもない。ただ社個の憎悪によって数字を握りつぶされ、辞職に追い込まれる。
窓のを見ると、いつのにか青空はのに覆われ、ポツリポツリとたいがガラスを濡らし始めていた。
このまま、本当に会社を辞めてしまっていいのだろうか。
の汗と努力を、こんな理尽な形で投げしてしまっていいのか。
葛藤が胸ので渦巻いていた、そのだった。
スーツのポケットので、スマートフォンが鋭いバイブレーションを響かせた。