"高卒エースを掃除係に落とした無能社長" 第1話
理尽な宣告
「ちょっと待ってください。……どういうことでしょうか」
俺のから漏れた言葉は、静まり返った会議の乾いた空気に溶けていった。
初めの曜、午。
玩具メーカー『アイリストイ株式会社』の本社階、会議では、毎恒例となっている営業全部の同営業成績報告会が執りわれていた。
百席くある机には、ピンとアイロンの効いたスーツにを包んだ営業第課から第課までの全部員が列して着席している。の吹きしから流れるたいが、張り詰めた内の空気をわずかに揺らしていた。
壇に据えられた演台のにっているのは、この、創業の先代社から突如としてバトンを引き継いだ社――倉島哲也(くらしま てつや)だった。
代半ばの倉島は、鋭く尖った顎に縁の鏡をかけ、常に眉にい縦皺を刻んでいる。仕ての良い濃紺のつ揃えスーツの胸元には、級万が鈍いを放っていた。
倉島は元にある青いバインダーに挟まれた資料を、指先で苛たしげにトントンと弾いた。そして、徹極まりない線を鏡の奥から俺へと据え付けた。
「言葉通りのだよ、篠田君」
倉島がマイクに吹き込む声は、アンプを通じて会議の隅々にまで気に響き渡った。
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「先の営業成績が、君は部内最位だったと言っているんだ。が社は今、変革のを迎えている。無能な社員に料を払い続けるほど、アイリストイは甘い組織ではない。しかも、卒の君をいつまでも雇い続ける義理など、会社には毛ないんだよ。俺はで経営をしていた先代とは違う。おけは切かけない」
会議に、張り詰めた沈黙が落ちた。
両隣に座る同僚たちが、息を呑んで線を伏せる気配が肌に伝わってくる。誰もが元の資料から顔をげようとせず、まるで嵐が過ぎるのを待つかのようにを縮めていた。
俺――篠田零司(しのだ れいじ)、歳。
営業第課に所属する俺は、演台につ社の姿をただじっと見つめ返していた。
彼は、体何を見てそう判断したのだろうか。
今の個別実績表をめぐる彼の言葉には、らかな狂気と、それ以に致命な誤りが含まれていた。
俺は先、数千万円規模の定番育玩具の追加受注を件まとめげ、さらには来期に向けた規型チェーンとの基本まで漕ぎ着けていた。誰がどう集計しても、先の俺の数字は部内最位どころか、例通りの数字を叩きしていたはずだった。
だが、倉島のその傲な瞳の奥にあるものは、純粋な事実への評価ではなかった。
ただひたすらに、俺というを組織から排除したいという、剥きしの敵だった。
「……きな過ちを犯している」
胸の奥で、徹な声が囁いた。
もし、彼がこので俺を切り捨てるというのなら。
に任せて事実を歪め、会社のために汗を流してきた営業の矜持を踏みにじるというのなら――。
俺はテーブルので膝のに置いていた両を、ゆっくりといた。
「わかりました。では、それで結構です」
俺の静かな返答が、静寂の会議に落ちた。
この瞬、倉島自はまだにもっていなかっただろう。
自分のくだらないプライドと浅ましい嫉妬のために俺を切り捨てたことが、やがて自らの社の座を完全に失わせる引きになるということを。