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"月二十五万を貪る偽装役員一家の転落" 第9話

罠の仕掛け

あのから、がはまるでが止まってしまったかのように静まり返っていた。

だが、それは絶望による沈黙ではなかった。

面で着実にめられる、獲物を仕留めるための徹な準備のだった。

文夫は翌、会社に数の休暇を申請すると、のを通じて腕利きの調査会社(探偵事務所)へとを運んだ。悠とその母親のかず子、そして私たちの娘であるミク――あのハイエナの素性と辺を、徹底に洗わせるためだった。

調査費用には、老資の残りを惜しみなく投入した。あいつらに毟り取られるくらいなら、あいつらを破滅させるための武器に変えてやる。夫婦の見は完全に致していた。

そして調査始からわずか数で、探偵から届けられた報告は、私たちの予を遥かに超える驚愕の事実で埋め尽くされていたのだ。

「……役者は揃ったな」

文夫は元に揃った分い報告と証拠の数々を確認し、く呟いた。

そのの夜、私はを決して、スマートフォンをに取った。

発信先は――悠の母親、かず子の番号だ。

コール音が数回鳴り、通話が繋がった。受話器を握る指先がりで微かに震えるのを、私はもう片方のでく抑えつけた。

『はい、どなた?』

受話から、相変わらずのな声が聞こえてくる。

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私は喉の奥をえ、図してか細く、怯えたような声を作ってをいた。

「……夜分遅くに申し訳ありません。ミクの母でございます」

『あら! 何かしら? まさかまた見苦しい言い訳をするつもりじゃないでしょうね?』

「いえ……先は、本当に申し訳ありませんでした。主もあのは取り乱しておりまして、しどうかしていたようでございます……」

私のにた々しい演技に、話の向こうのかず子の声が、骨に歓と傲さを帯びていくのが分かった。

「あの……悠さんの会社への資援助の件ですが……娘の将来のためにも、向きに考えさせていただきたくじます」

『あらあ! ようやくお分かりになったのかしら!』

受話の向こうで、かず子が品にを鳴らして笑いするのが聞こえた。

『最初からそう素直になればよろしいのよ! 庶民は庶民らしく、の丈にった判断をなさらないとねえ。それで? 千万円、きっちり括で用できるのかしら?』

「はい……主の退職や定期預をすべて解約して、現でご用いたしました。ただ、額な取引になりますので、直接お会いして、ご族の皆様のでお渡ししたくじます」

『当然ですわ! では、今度の週末の曜、午に伺いますわ。余計な細はなさらないことですことね!』

「はい、お待ち申しげております……」

ガチャンと、向こうから方に話が切られた。

私は静かに通話を終し、スマートフォンの画面を伏せた。

隣に座っていた文夫が、無言で私を見つめ、力く頷いた。

「かよ子、よくやった」

「ええ。週末、あいつらは必ず揃ってやって来るわ」

罠は仕掛けられた。

という餌に群がるハイエナどもが、自分たちの破滅への第歩を踏みす瞬を、私たちはただ静かに待った。

そして、運命の曜がやってきた。

午ちょうど。

がのインターホンが、けたたましく鳴り響いた。

私はく息を吸い込み、たい笑みを元に浮かべると、静かに玄関へと向かった。

ドアをけると、そこには案の定、獲物をにして舌なめずりをするハイエナの群れがっていた。

娘のミク、婿の悠、そして母親のかず子。

全員の顔に、隠しきれない浅ましい欲望と、私たちへの骨な侮蔑の表が張り付いていた。

「お父さん、ちゃんと反省したわけ?」

ミクが腕を組み、馬鹿にしたような笑みを浮かべながら真っ先にがり込んできた。

「まあまあミク、お父さんも僕というの本当の価値が、ようやく理解できたんだろうさ」

悠が得満面に肩を揺らし、かず子は「くがらせてちょうだい」とプンプンの匂いを撒き散らしながら靴を脱ぎ捨てた。

はズカズカとリビングへがり込み、が物顔でソファーに腰をろした。

だが、彼らの線は座ると同に、ただ点へと釘付けになった。

リビングのローテーブルの央。

そこに、文夫が用した、に鈍くるつの頑丈なジュラルミンケースが置かれていたからだ。

もちろん――そのは、円たりとも入っていない完全な空っぽである。

しかし、に目が眩んだハイエナたちの目には、それがまるで眩い宝のに見えているようだった。

ゴクリ、と。

誰かが喉を鳴らす乾いた音が、静かなリビングに響いた。

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