"月二十五万を貪る偽装役員一家の転落" 第5話
侮辱の話
スマートフォンを握りしめたまま、私はそのにち尽くしていた。
腕の力が抜け、スマートフォンがから滑り落ちて、ダイニングテーブルのにコトリと乾いた音をてた。
涙すらなかった。
あまりの衝撃と絶望に、のというものは、定の許容量を超えると麻痺してしまうらしい。ただ、胸の奥くにぽっかりと、底のれない巨な黒い穴が空いてしまったかのような虚無だけが広がっていた。
「……私たちの、は……体何だったんだろうな」
文夫の、枯れ果てたような呟きが静まり返った部に落ちた。
夫はテーブルに両肘をつき、くを垂れていた。髪の混じり始めた髪が、夕暮れの暗がりので痛々しく見えた。
娘の学のために、欲しいものも買わずにした々。
ミクが邪を引いたと聞けば、夜でもをらせて病院を探し回ったこと。
成式で着せた美しい振袖を、文夫が目を細めて眺めていたあのの誇らしげな笑顔。
そのすべてが、娘にとっては「ちょろいバカ親」からを毟り取るための、都の良い枷でしかなかったのだ。
「使えないお父さん、か……」
文夫が自嘲気に角を歪めた。
「あの子に自由をさせないために、をげて、をすするようないをして働いてきた。それが、あの子にとっては『しがないサラリーマン』で、『使えない男』だったんだな」
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「あなた……」
私は夫の丸まった背にそっとを置いた。
かける言葉が見つからなかった。どんな慰めの言葉も、今はこのの痛みを癒すことはできない。そして私自もまた、臓を氷の刃で抉られたような激痛に苛まれていた。
めきった卓の料理を、私たちは言も交わさずに片付けた。
丹精込めて作った角煮も、唐揚げも、喉を通るはずがなかった。プラスチックの保容器に移し替える私のは、刻みに震え続けていた。
その夜、私たちはほとんど眠ることができなかった。
寝の井を見つめながら、暗ので折漏れる夫の浅い溜息を聞いていた。
計の秒針が、カチ、カチと無慈にを刻む。
あの優しい娘は、どこで消えてしまったのか。最初からあんなだったのか、それともあの悠という男とその母親に毒されて変わってしまったのか。
どれだけ考えても、答えなどるはずもなかった。
確かなことはただつ。
私たちがし、すべてを捧げて育ててきた娘は、もうこの世界のどこにもしないということだけだった。
そして、それから数のことである。
事態は、私たちの像を遥かに超える最悪の形へと転がり落ちていくことになった。
平の午過ぎ。
宅の静寂を破るように、なエンジン音ががのに響き渡った。
審にってリビングの窓からを覗き見た私は、わず息を呑んだ。
がの古びた扉のすぐに、黒りする見慣れない級が、横付けするようにしていたのだ。