"元義母の誤爆着信と暴かれた花婿の嘘" 第6話
夜の真実
そのの午、俺は周囲のたい線を浴びながら、で製造現の調査を始した。
「犯が現をうろつくなよな」
すれ違いざまに聞こえる同僚のないを無し、俺はメインラインの制御盤の端末に向かった。
作業報のベースの記録、央サーバーに残された械の稼働ログ、各程の温度推移グラフ。それらをつひとつ、作業で照していく。
すると――ある決定な異常が、俺の目にび込んできた。
「……なんだ、これは」
先週の曜。
処理炉の温度設定が、通常よりも図に『度く』き換えられているログがしていたのだ。
処理において度の狂いは致命だ。属組織の結晶化が完全になり、程の切削に歪みがじて寸法が狂う。良品が百個以た原因は、違いなくこの設定変更にあった。
だが、問題はそのだった。
設定変更が実されたタイムスタンプは――『曜の朝分』。
俺が社する午よりも、くだった。
つまり、この設定変更をったのは、絶対に俺ではない。
さらに審にい、俺は荷の検査程のデータベースを洗い直した。
背筋が凍りついた。
処理で寸法が狂ったはずの製品群の測定値が、検査データベースでは、なぜかすべて『格ラインの内側』の数値に自然にき換えられていたのだ。
広告
本来なら内で良品として弾かれるべきだったものが、データ改ざんによって格証を発され、そのまま気へと荷されていた。
これは、単純な操作ミスなどではない。
何者かが図に械の設定をいじり、さらにその結果じた異常を隠蔽するために、組織にデータを改ざんしていたのだ。
「、変だったな」
背から、に温かい声がかけられた。
振り返ると、営業部のが、缶コーヒーを本に持ってっていた。
は俺と同世代の営業部員で、現の苦労をよく理解してくれる、社内で数ない俺の理解者のだった。
「さん……」
「川部の鳴り声、事務所まで丸聞こえだったよ。ひどい言われようだったな」
はため息をつきながら、温かい缶コーヒーを本俺に差ししてくれた。
「でもな、俺はってるよ。おがそんな初歩なミスをするはずがないってことくらい。営業の俺たちが客先で胸を張って製品を売れるのは、が毎朝誰よりもく来て、完璧にラインを仕げてくれてるからだ。現の連は馬鹿ばっかりだから気づかないが、営業部の連はみんなおに謝してるんだぞ」
え切った体に、の言葉が温かく染み渡っていくようだった。
「ありがとうございます、さん……」
「おのミスじゃないはずだ。負けるなよ、」
は俺の肩をポンと叩き、営業フロアへと戻っていった。
たったでも、自分の仕事を見てくれているがいる。その事実だけで、折れかけていたがどれほど救われたか分からなかった。
だが、現実は非だった。
そのの夕方過ぎ、俺は再び川部に呼びされた。
パーテーションで仕切られた部席の。川部はパソコンの画面を眺めたまま、俺に線すら向けずにたく言い放った。
「。原因は特定できたんだろうな?」
「……はい。データを確認いたしましたが、私が設定を変更した形跡は切ありませんでした。むしろ、曜の朝に――」
「言い訳は聞かんと言ったはずだ」
川部はカチャリとマウスを置き、酷な目で俺を射すくめた。
「おが自しないなら、それで結構だ。、経営陣と品質保証担当の役員が席する緊急対策会議がかれる。私はそこで、今回のインシデントの全責任者として、おの名を正式に報告する」
「部! それはあんまりです! ログを調べれば、私の無実は証できます!」
「うるさい! おみたいな卒の雑用係がこの会社にいても、百害あって利なしなんだよ!」
川部は机をバンと叩いてちがった。
「この件が片付いたら、おの処遇も考えさせてもらう。
解雇か、あるいは方の産廃処理施設への向だな。覚悟しておけ」
反論の言葉は、すべてたい壁にね返された。
何を言っても、この男は最初から俺の首を差しすことで、自らの保を図る腹づもりなのだ。
事務所をた、計の針は午を回っていた。
夜のたいが、ポツポツと舗装を濡らし始めていた。
「……俺は、体何のために働いてきたんだろうな」
傘も差さず、駅へ向かう夜を歩きながら、胸の奥から黒いが渦を巻いてせりがってきた。
誰よりもく社し、誰よりも械をし、にまみれて製造ラインを守り続けてきた。
その結果が、これなのか。
理尽な罪を着せられ、無能と罵倒され、ゴミのように切り捨てられるのか。
だが――。
「このまま、やられてたまるか」
ち止まり、に濡れる夜空を見げた。
の温かい言葉が脳裏に蘇る。
俺の技術は、俺のプライドは、あんな卑劣な男たちの保のために踏みにじられていいはずがない。
真実をのに晒す。
誰が械の設定を狂わせ、誰がデータを改ざんしたのか。そのかぬ証拠を完璧に掴み、叩きつけてやる。
それが、技術者としての俺の、最のだった。
俺は踵を返し、再び瑞穂製作所のへとに戻った。
はすでに消灯され、静まり返っていた。
守に「忘れ物をした」
と告げて通用を通り、俺は製造部のサーバールームの端末へと向かった。
刻は、夜を回っていた。
製造ラインの稼働ログ、温度記録、検査データベースの更履歴、そして社内ネットワークのアクセスログ。
何万にも及ぶ無質な英数字のログデータを、俺は血った目でずつ照していった。
目がかすみ、首筋が鉛のようにくなる。
午、午……は容赦なく過ぎていく。
そして――夜分。
画面に表示されたアクセスログの突きわせ結果を見た瞬、俺は息を呑んだ。
「……そういうことだったのか」
曜の朝分。
処理炉の温度設定を変更した端末のログインIDは――『kitagawa_t』。川部自のアカウントだった。
さらに、同夕方に検査データを格値へ改ざんした端末のログインIDは――『yoshida_m』。吉田まみのアカウント。
社内メールのサーバーに残されたバックアップログを復元すると、さらにおぞましい真実が浮き彫りになった。
川部は先、自らの社内評価をげるため、経営陣に対して「製造設備のメンテナンス費用および力コストのパーセント削減」を独断で公約していたのだ。
そのコスト削減を達成するため、川部は械の稼働マニュアルを無し、処理炉の予を削って設定温度を無理やり度引きげるという暴挙にていた。
その結果、案の定量の良品が発してしまい、慌てた川部は、みを握っている部の吉田に指示をして検査データを改ざんさせ、隠蔽を図った。
そして、気からのクレームで隠蔽が破綻するや否や、すべての罪を「毎朝械を触っている卒の」になすりつけようとしたのだ。
完璧な証拠だった。
これだけのログとメールの記録があれば、俺の無実は完全に証される。
それどころか、川と吉田の背信為は、懲戒解雇に値する決定なスキャンダルだった。
「……終わったな」
俺は震えるで、すべてのログデータと改ざんの証拠ファイルをUSBメモリーへとバックアップした。
カチリと端末の源を落とし、USBメモリーを胸ポケットの奥くにしまい込む。
疲労困憊だったが、胸の奥には、ようやくのトンネルを抜けしたような確かなが灯っていた。