"「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転" 第10話
かつて「俺のでわせてやっている」と豪語していた男は今、賞期限切れのコンビニ弁当を値切りシール目当てで漁る活に転落していた。
方のるいは、慰謝料請求の内容証が届いた翌には夜逃げ同然に姿を消した。その、別の融ブローカーの男とトラブルを起こして方をくらましたとの噂で聞いたが、誠にとってはもはやどうでもいいことだった。
誠ののを支配していたのは、ただつ。
——かな子の億円。
あれは本来、自分がにするはずのだったのだ。自分が結婚してやり、養ってやり、妊の欠陥を背負ってやったのだから、その対価として半分……いや、全額受け取る権利があるはずだ。
「俺をこんな目に遭わせて……自分だけ良い気になりやがって……!」
誠はポケットのに忍ばせた通の類——自らが作成した「復縁および財産分与」という稚拙な求を握りしめ、ふらふらとを横断した。
「かな子ォッ!!」
現の静寂を破り、カフェのガラスドアが乱暴に押しけられた。たい突とともに、饐えたアルコールと煙の悪臭が内に崩れ込む。
「な、なんだあんたは! 関係者以ち入り禁止だぞ!」
藤監督が咄嗟にを乗りして遮ろうとしたが、誠は狂気に憑りつかれた力でそれを突きばした。
「邪魔すんな! 俺はこいつの夫だぞ! おい、かな子! やっと見つけたぞ、てめえ!」
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かな子は作業台のでを止め、静かに誠を見据えた。驚きも、揺もなかった。ただ、ゴミを見るような、どこまでもえ切った差しだった。
「……誠君。弁護士から接禁止の警告が届いているはずよ。ここへを踏み入れた点で、警察への通報対象になるけれど」
「警察だあ!? ガタガタ抜かすんじゃねえよ!」誠は唾をばしながら、懐からぐしゃぐしゃの類を叩きつけるようにカウンターに置いた。「見ろ! このにサインしろ! おが隠し持ってた億のうち、せめて半分……いや、億寄越せ! そうすりゃ過のことはに流して、もう度夫婦に戻ってやってもいいって言ってんだよ!」
あまりの図々しさと浅ましさに、周囲の職たちも呆気にとられて言葉を失った。
「あなた、本気で言っているの?」
かな子のから漏れたのは、りすら通り越した乾いた嘲笑だった。
「私があなたに円でも渡す理由がどこにあるの? あれは私の父が何も汗垂らして築きげた特財産よ。私を『子どもも産めない役たず』と罵り、活費を武器にいたぶり、で若い女とホテル通いをしていたあなたに、なぜ私の父の血と汗を恵んでやらなきゃいけないの?」
「俺は夫だったんだよ! おみたいな欠陥品をもらってやった恩を忘れたのか!」
誠が声とともにを振りげ、かな子へと掴みかかろうとした瞬だった。
「そこまでだ、誠君」
背の入りから、くよく通る声が響いた。
振り返った誠の界にび込んできたのは、仕ての良いスーツを着た神崎弁護士と、の制警官の姿だった。
「な……なんで、警察が……!?」
「あなたのパターンはすべて監対象でしたよ」神崎弁護士は徹な線で帳をいた。「先週からかな子さんの実周辺を徘徊し、興信所を使ってこの舗の所を特定したことも把握しています。建造物侵入、並びにストーカー規制法に基づく警告命令違反の現犯です」
警官が素く誠の両脇を固め、腕を背へねじりげた。
「痛え! せ! 俺は妻と話しいに来ただけだ! おい、かな子! お、俺を見捨てる気か! 俺たちは夫婦だっただろ! 助けてくれよ、かな子ォッ!」
に組み伏せられ、のついた靴をバタつかせながら泣き叫ぶ誠。その姿には、かつて部を睥睨し、妻を蹴にしていた「プライドのい男」の欠片も残っていなかった。
かな子は歩づき、にいつくばる誠を見ろした。
「誠君。あなたは最初から、私のことも、子どもを産むことも、本当はどうでもよかったのね。あなたがしていたのは『に自できる庭』というアクセサリーと、自分を無条件に肯定してくれる都のいい奴隷だけだった」
「ち、違う……俺は……」
「さようなら。
もう度と、私のに関わらないで」