"「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転" 第5話
「お父さん……聞いてほしいことがあるの」
かな子は喉を詰まらせながら、しかし断固とした調で切りした。
「私、誠君と婚するつもりなの」
受話器の向こうで、父が息を呑む気配がした。
かな子はこれまでの数、誠から受けてきた言葉の暴力、妊を理由にした侮辱、そして先ほどに入れたばかりの浮気の証拠について、包み隠さずすべてを打ちけた。
い沈黙が流れた。やがて、父のから絞りされたのは、りで震えるい声だった。
『……そうか。そんな獄のに、おをで置いていたのか。気づいてやれず、本当にすまなかった』
「ううん、私が隠してたから……。だからお父さん、お願いがあるの。その贈与の続き、私が誠君と完全に婚して、戸籍が抜けるまで待ってもらえないかしら。あの男には、私の実のことなんて円たりとも渡したくないの」
『当然だ。と税理士には私から指示をし、執続きを止させておく。かな子、何も恐れることはない。おの背には私たちがいる。すべてを片付けて、堂々と帰ってきなさい』
「ありがとう、お父さん……!」
話を切った、かな子はく息を吸い込んだ。
元のスマートフォンには、誠の貞を証する写真。そして、婚届。
自分を縛り付けていた「経済な」という最の枷は、今この瞬に完全に砕け散った。
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その夜、午分。
玄関のドアが乱暴にき、誠が帰宅した。夜とは比べ物にならないほど嫌で、交じりにリビングの扉を蹴りける。
「おい、かな子! 起きてるな? ちょうどいい、おに事な話があるんだよ!」
誠はソファにドカリと腰をろし、ネクタイを乱暴に引き抜きながら、傲極まりない笑みをその卑た元に浮かべた。
「単刀直入に言ってやる。俺と婚しろ」
かな子はじることなく、静かに誠を見つめ返した。
「婚?」
「ああ、そうだ。の穴かっぽじってよく聞けよ。子どもも産めねえ役たずの欠陥ババアなんぞ、いつまでも養ってられるかよ! 俺にはな、若くて嬌があって、俺の子どもを産んでくれる素らしい女性がいるんだよ!」
誠は勝ち誇ったように胸を張り、テーブルをのひらでバンと叩いた。
「おのせいで俺の貴な代が無駄になったんだ。迷惑料と慰謝料として、おから百万円括で支払ってもらうからな! 払えねえなら、おのあの田舎臭い実に乗り込んで親父から毟り取ってやるだけだ!」
子どもの産めない妻を罵倒し、倫相と再婚するために、被害者面をして百万円を求する。ここまで醜悪で浅ましいが、この世にするのか。
かな子の瞳の奥から、切の迷いが消えった。
「いいわよ」
かな子は静かにちがり、テーブルの引きしからあらかじめ用してあった枚のを取りし、誠の目のに滑らせた。
「はい、記入済みの婚届。あなたのサインと印鑑を押せば、今すぐせるわ」
誠の顔から、瞬にして嘲笑が凍りついた。
「……あ?」
予の展に、誠は抜けにをけたまま、目のの用とかな子の顔を交互に見つめた。
「な、なんだよこれ……用がいいじゃねえか。脅しのつもりか?」
「脅しじゃないわ。お望み通り、今すぐ婚してあげるって言ってるのよ。さあ、くいて。私、の番で役所にしにくから」
誠は狼狽を隠すようにを鳴らし、ペンを乱暴に握りしめた。
「けっ……で泣きついてきても絶対に復縁なんてしてやらねえからな! 精々、野垂れぬがいいわ!」
勢いよくペン先をらせ、署名捺印を終えた誠から、かな子は迷わず婚届を引き抜いた。
「じゃあ、の朝には荷物をまとめてていくわね。今までお世話になりました」
微笑みすら浮かべて礼するかの子をに、誠は気悪そうに眉をひそめた。
翌朝、役所の窓に受理された婚届を見届けた、かな子は実へと向かった。
だが、物語はこれで終わりではなかった。
の昼がり。実の縁側で穏やかなに吹かれていたかな子のスマートフォンが、狂ったような振を始め、画面には『誠』の文字が、件を超える着信とともに赤く点滅していた——。