"「子どもを産めない」と捨てられた妻の逆転" 第2話
俺のそばに、かな子がいてくれるだけでいいんだ。そんなことで泣くなよ」
その温かい言葉に、かな子は救われたとった。このとなら、どんな試練も乗り越えていける。涯をかけてこのを支えようと、に誓った。
だが、それは完全な偽りだった。
入籍を済ませ、かな子が誠のい希望に従って正社員を退職し、所のスーパーのパートに切り替えた直から、誠の態度は変した。
「おい、部の隅に埃が溜まってんぞ。専業主婦まがいのくせに、掃除つ満にかけられねえのか」 「誰ので飯わせてもらってるとってんだ? 稼ぎのない居候の分際で、偉そうに答えするな」
最初はただの仕事のストレスだとっていた。だが、を追うごとに言葉の棘は凶悪さを増し、やがてその矛先は、かな子が最も触れられたくない傷へと正確に突き刺さるようになった。
ある夜、器洗いが遅れたことに腹をてた誠は、持っていたビジネスバッグをに叩きつけ、唾をばして鳴り散らした。
「そんなんだから子どもも産めねえ体なんだよ! 女としての能すら果たせねえ欠陥品が、いっちょに夫に盾突いてんじゃねえぞ! 子ども産めるようになってから文句言え、無理だろうけどな!」
臓を直撃されたような衝撃に、かな子は言葉を失った。
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「結婚……子どもがいなくてもいいって、あんなに言ってくれたじゃない……」
震える声で絞りした言葉を、誠は嘲笑で踏みにじった。
「はあ? そんな昔の世辞を本気にしてたのか? あのは結婚の続き直だったからわせてやっただけだろ。まさか本当に子どもも産めない役たずの穀潰しを、養う羽目になるとはわなかったぜ」
そのを境に、の寝は完全に分けられた。誠はかな子を妻ではなく、無償の政婦、あるいはサンドバッグのように扱い始めた。
「おは俺がいなきゃ週で野垂れぬんだよ」
誠が繰り返すその呪詛は、じわじわとかな子のを蝕み、自尊を削り取っていった。
え切った庭ので、誠の泊や遅刻は急激に増えていった。
「今は営業部の繁忙期だ。残業と休勤が続くから、飯の準備はいらん」
そう言って週には午様になり、週末も「接待ゴルフ」「顧客との打ちわせ」と称して朝くからかけていく。
当初、かな子はそれを真に受けていた。どれほど暴言を吐かれようと、夫がで激務に耐えているのなら、せめてのをえておくのが自分の役目だと信じようとしていた。
だが、あるの旬、リビングの棚に放置されていた誠の与細を目にした、かな子の胸にたい疑がった。
「……当が、ゼロ?」
基本と職責当の欄には規定通りの数字が並んでいたが、残業代の項目は空欄だった。休勤当も円たりとも計されていない。記帳された通帳を確認しても、振り込まれているのは毎寸分違わぬ取り額だけだった。
残業も休勤も、すべて嘘。
ならば、誠は夜な夜な、どこで誰と過ごしているのか。
その答えが決定な形となって突きつけられたのは、の肌寒い夜のことだった。
眠症気だったかな子は、午を過ぎても眠れず、暗いリビングで温かいココアを啜っていた。夜番組の淡いが、静まり返った部を青く照らしている。
カチャリ。
玄関の解錠音が響いた。靴を脱ぎ、千鳥でリビングに入ってきた誠は、嫌そうにをずさんでいた。普段の張り詰めた苛ちはなく、頬は潮し、どこか満ちりた表を浮かべている。
しかし、ソファに座るかな子の姿を界に捉えた瞬、その表は変した。
「……チッ、なんだよ。まだ起きてたのか」
「眠れなくて。おかえりなさい」
「鬱陶しいな。の顔をジロジロ見てんじゃねえよ、さっさと寝ろ」
誠は骨に顔をしかめ、かな子の横を乱暴にすり抜けて洗面所へと向かった。
その瞬だった。
すれ違いざま、かな子の腔を、甘く濃なのりが貫いた。
シャネルのチャンス——決して誠が好むようなメンズトワレのりではない。パウダリーで、若い女性が好んでつける、紛れもないレディースの匂い。