"偽りの血液型" 第7話
父は腕を組み、畳のですやすやと眠るの髪の赤ん坊をじっと見つめていた。
「……ただ、問題なのは、なぜこの子が髪なのかだな」
父のい呟きに、私は涙を拭って頷くしかなかった。 悔しいけれど、あの義母でなくとも、純本の夫婦から髪の赤ん坊がまれ、血液型まで致しなければ、妻の貞を疑うのが世の自然な反応だろう。 しかし、今の私には、自らの潔を客観に証する術など何つしなかった。 弁護士を介して送られてきた婚届には、すでに勇吾の署名と捺印がなされており、慰謝料の請求を放棄する代わりに即座に署名せよとの文が添えられていた。
(もう、いい……) 信じてくれなかった夫。証拠を精査することもなく、族の体面だけを気にして私を切り捨てた義父。 結局のところ、勇吾と私の縁は、その程度のっぺらなものだったのだ。 この、私は夫への未練を、の底から完全に断ち切った。 私は娘に【凛(りん)】と名付けた。 どんな理尽な嵐のでも、凛としてく、誇りくきていってほしいという願いを込めて。
正式に婚が成した、私はかつて勤めていた元のフラワーショップへとをげ、復帰させてもらった。 両親の温かい助けを借りながら、私は昼夜を問わず働き、無で凛を育てげた。
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目まぐるしく過ぎる々の疲労ので、あの忌まわしい本の記憶は、次第に過の傷跡へと化していくはずだった。
婚から数ヶが経った、あるのの夕暮れ。 パートの仕事を終え、保育園に凛を迎えにって実へ戻る途、私のスマートフォンがポケットので震えた。 傘を差しながら画面を見ると、登録のない番号が表示されていた。
「はい、尾です」
『……僕です。さやかさん、慎司です』
スピーカーから流れてきた落ち着いたい声に、私はわずを止めた。
「慎司……さん?」
『突然の連絡ですみません。……事な話があるんです。度、会ってもらえませんか』
数、私は両親に凛を預け、駅の静かな喫茶で慎司と向かいっていた。 テーブルを挟んで座る慎司は、黒いコートを脱ぎ、私に向かってく、々とをげた。
「この度は……僕の両親と兄が、さやかさんにあまりにも酷い仕打ちをしてしまい、本当に申し訳ありませんでした」
「慎司さん、をげてください。……あなたに謝られる筋いのことではありません」
私は湯気のつ茶のカップを見つめながら、静かに息を吸い込んだ。
「信じてもらえないかもしれませんが……私、本当に倫なんてしていないんです。神に誓って、勇吾さんを裏切るようなことはしていません」
「分かっています」
慎司は即座に、迷いのない声で言った。 その鏡の奥の真摯な差しを見た瞬、私の胸のに流のような直がった。 私はを乗りし、震える声で尋ねた。
「慎司さん……あなた、凛がなぜ髪でまれてきたのか、その理由に当たりがあるんじゃないですか?」
慎司は虚を突かれたように目を見張り、唇を固く結んで黙り込んだ。 その沈黙こそが、何よりの雄弁な肯定だった。
「そうなんですね!? 何かっていることがあるなら、お願いです、教えてください!」
必に詰め寄る私に対し、慎司は苦悶の表を浮かべて首を横に振った。
「……ごめんなさい。今は、言えません。確固たる証拠がないんです。証拠がない以、僕の考えはただの憶測でしかない。今それを話せば、さやかさんをさらに無用な混乱に巻き込んでしまう」
医師らしい静な物言いに、私はそれ以踏み込むことができなかった。 憶測でもいいから真実をりたい——そう叫びたい気持ちを必に押し殺す。 すると、慎司は真っ直ぐに私の目を見つめ、静かに切りしてきた。
「さやかさん。僕に……これからあなたが凛ちゃんを育てていくための、活のサポートをさせてもらえませんか?」
「え……?」
「さやかさんと兄が婚したとしても、凛ちゃんが僕の姪であることに変わりはありません。医療費や教育費、何か困ったことがあれば、僕を頼ってほしいんです」
あまりの申しに、私は戸惑った。
「で、でも……そんなことをしたら、あのお義母さんがったら、今度こそ慎司さんに何をするか……」