"妹が断った牡蠣漁師は、港の社長だった" 第10話
その声はとてもさかったが、静まり返ったのにいた全員のに、はっきりと届いた。
「来も、うちの牡蠣を持ってきます」
総郎がそう言うと、主はく頷いた。
「お待ちしております。今度は、しっかりと名と値段をつけて」
主は、目に涙を浮かべながら、嬉しそうに笑った。
「はい。神総郎さんの牡蠣として、胸を張ってお客様におしします」
帰り、私たちが乗る古い軽トラックの窓から見えるが、のを受けてくキラキラと揺れていた。
総郎は、ハンドルを握り、を向いたままをいた。
「会社の名を、変えようといます」
「何にするの?」
私が尋ねると、彼はしはにかんだように笑った。
「まだ、決めていません。これから、あなたと緒に決めたいんです」
私は、彼の横顔を見て、嬉しくなってきく頷いた。
最初は、妹の「代わり」として始まったはずの結婚だった。
けれど、私はこのさな港で、決して誰かの代わりではなく、私自としてきる所を、ようやく見つけることができた。
は、ただ黙って誰かに選ばれるのを待っているだけでは、決して自分のを取り戻すことはできないのかもしれない。
自分の名を、自分のでしっかりとく。
そして、その名を呼んでくれる切なたちのそばで、きていく。
それが、回りをしてようやく巡ってきた、私自の、本当の順番だった。