"妹が断った牡蠣漁師は、港の社長だった" 第3話
私は、し照れくさそうに微笑んだ。
総郎は、それを聞いて、目尻をげて優しく笑った。
「それは、すごい仕事ですね」
彼は、く頷きながら言葉を続けた。
「牡蠣も同じです。誰が、どんなで育てたか伝われば、べるのの見え方まで、すっかり変わります」
私は、彼のその言葉を聞いて、胸の奥がくなるのをじた。
私が16、ずっと続けてきた仕事。
族の誰として、そんなに私の仕事を認めてくれたことは、1度もなかったのだ。
それから1ヶのことだった。
総郎から、正式に私へ結婚の申し込みがあった。
私は、母にその報告をするため、リビングへと向かった。
母は、私の言葉を聞いて、ため息混じりにこう言った。
「まあ、織ももう35歳だもの。今更えり好みなんて、できないわね」
私は、母のたい言葉に、ただ黙ってうつむくしかなかった。
結婚式当も、美咲は姿を見せることはなかった。
私は、たった4箱のダンボールと、古びた1つの鞄だけをに持ち、実をにした。
そして、総郎の待つ島へと向かって、に乗り込んだ。
波に揺られて辿り着いた島の港で、私は総郎の姿を探した。
彼が私を見つけて歩み寄ってきた、とても議な来事が起きた。
すれ違った70歳を過ぎた老漁師が、総郎の姿を見るなり、慌てて子を取ったのだ。
「総さん、このは本当に助かったよ」
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老漁師は、くをげて謝の言葉を述べた。
それだけではなかった。
加の入りにっていた女性たちも、網を繕っていた若い漁師たちも、総郎が目のを通るたびに、必ず作業のを止めてをげた。
私は、周囲の々のその様子を、驚きの目で見つめていた。
彼は、きっとこの港でく働いているから、皆から慕われているのだろう。
私は、そのはただ単純にそうっていた。
私たちが暮らすことになるしいは、港を見ろす台に建つ、とても古い平だった。
のに入ると、豪華な具などは何つなく、台所のは歩くたびにギシギシときしむ音がした。
それでも、すべての窓ガラスは曇りつなく綺麗に磨きげられていた。
そして、私のために用された部の窓には、真しいカーテンがかけられていた。
私は、その真しい布にそっと触れ、彼の器用な優しさに胸を打たれた。
そのの夜、初めて2きりで卓を囲んだ。
私は、総郎の顔をまっすぐに見つめ、ずっと気になっていたことをにした。
「妹の代わりに来てしまって、本当にごめんなさい」
私は、くをげて謝罪した。
総郎は、持っていた箸を静かに箸置きのに置いた。
「俺は、妹さんには会ったことがありません」
彼は、真剣な差しで私を見つめた。
「でも、写真では……」
私が言い淀むと、彼は私の言葉を優しく遮った。
「写真だけで、は決められない」
彼は、力い声でそう言い切った。
「あの、正直にご自分の事を話して、それでも逃げずに、俺の目のに座っていた。俺は、そんなあなたと暮らしたいとったんです」
私は、その言葉に息を呑んだ。
総郎は、し照れたように線をふいとした。
「ここへ来てくれたのが、織さんで本当に良かった」
彼は、窓のの暗いを見つめながら、ぽつりとそう呟いた。
私は、彼の横顔をじっと見つめたまま、涙が溢れそうになるのを必でこらえた。
自分が誰かの代わりなどではないと、はっきりと誰かから言われたのは、まれて初めてのことだった。
翌週から、私は港の加へ通い、伝いを始めることになった。
しかし、初は失敗の連続だった。
牡蠣の殻にこびりついた汚れを洗う速さも、それを荷箱へ並べる正しい向きも、私にはまったく分からなかった。
昼休み、私は休憩の片隅でを縮めていた。
その、い壁の向こう側から、従業員たちのひそひそ声が聞こえてきた。
「町から来た奥さんだろ。あんなの、3で逃げすよ」
「なんでも、妹の代わりに嫁いできたって話だし。どうせ本気じゃないさ」
私は、唇をく噛み締めた。
悔しかった。
それでも、言い返す勇気は私にはなく、ただじっと耐えるしかなかった。
その夜、私はに帰り、総郎に今あった来事をぽつりぽつりと話した。