"母の還暦祝いで家を奪おうとした夫" 第24話
彼女は振り振りを交えて話した。
「義母さんが『空気読みなさいよ。息子の邪魔をしないで』って言ったら」
佐藤さんは声をひそめた。
「あの女、『あんたの息子は嫁のが欲しいのか、私が欲しいのか、どっちなのよ!』ってやり返してたわ」
私は廊の方を見やった。
の女のに挟まれたレオの顔は、干からびたの皮のように引きつっていた。
来だ。
私がをくに、彼らはすでに互いに噛み付きっている。
宴会が正式に始まるに、レオの体面にはすでにつの亀裂が入った。
つ目、さんがレオのコネクションが空形だと気づいたこと。
つ目、義母がまゆのが計画の邪魔になると気づいたこと。
つ目、まゆが自分は切にされる未来の妻ではなく、ただの駒に過ぎないと気づいたこと。
このつの亀裂からは血は流れないが、たいが吹き込んでいる。
が吹き込めば、のはあっというにえ切るのだ。
ちょうど、客がほぼ揃った。
ウェイターが、母の好物である華の料理を運び始めた。
牛肉の煮込み、スペアリブの甘酢あんかけ、茹でエビ。
皿が次々と円卓に並べられる。
子供たちは声をしながら、子のをり回っている。
所のさんが、母と昔の内職の話をして、極まって目を赤くしていた。
広告
以の私なら、この景を見て温かいとじたことだろう。
がきていくで求めるのは、こういうささやかな賑わいだ。
誕を覚えていてくれるがいて、苦労したねと言ってくれるがいて、お茶を差しして「お母さん」と呼んでくれるがいる。
でも、その賑わいさえも利用することができるのだ。
レオはステージの脇でマイクを持ち、マイクテストをしていた。
彼はまだ、スーツの袖を直している。
何度も、何度も。
仕ての良いスーツは彼の体にぴったりとっているはずなのに、なぜかのを着せられているように見えた。
ホテルの専属司会者が、甘ったるい声でアナウンスを始めた。
「ご親族並びにご友の皆様、本はきよ子様の還暦祝いにようこそお越しくださいました」
拍が湧き起こった。
母はメインテーブルの央に座り、背筋を真っ直ぐに伸ばしている。
レオが私を見た。
その目には警告と、そして懇願のが混じっていた。
私は彼に向かって微笑んだ。
彼はきっと、私がこのタイミングでステージに駆けがるとっているのだろう。
録音を流し、まゆを皆のに引きずりして状させるのだと。
もしそうすれば、彼はこの事態を夫婦喧嘩の枠に押し込める。
私がパニックになっているとし、まゆのを誤解だと言いくるめる余が残る。
でも、私はそんなことはしない。
彼が撒き散らしたを、わざわざ私がかき回す必はないのだ。
私は皆に、彼ら自の言葉で語らせる。
綺麗な建をたっぷりと語らせたで、その言葉の裏に蠢く醜い虫を、自ら太陽のに引きずりさせるのだ。
司会者が母に言挨拶を求めた。
母はマイクを握った。
はし震えていたが、声はしっかりとしていた。
「皆様、本はお集まりいただきありがとうございます」
彼女は会を見渡して、言った。
「今私が嬉しいのは、宴会が盛だからではありません」
彼女は私を見て、微笑んだ。
「娘がここにいてくれるからです」
彼女は声を詰まらせた。
「あの子はこれまで、本当に苦労してきました。母親として言、よく頑張ったねと言ってやりたいんです」
の奥がツンとした。
会の親戚たちが拍を送る。
レオもまた、優しげな笑みを浮かべて拍していた。
まるで、母のその言葉の功績の半分は自分にあるかのように。
続いて司会者が言った。
「それでは、お婿さんのレオ様よりお祝いの言葉を頂戴いたします」
レオはステージにがり、スポットライトを浴びた。
彼は再び、誰もが賞賛する完璧な男の顔になった。
マイクを握り、会を見渡し、最に私に線をわせた。
「お義母さん、お誕おめでとうございます」
彼はくをげた。
「これまで本当にご苦労様でした。これからは僕とゆかで、しっかりと義母さんを支えていきます」