"母の還暦祝いで家を奪おうとした夫" 第2話
帳にこんなことまでき込んでいたのだと、胸がくなった。
とは束だけでなく、予約されたメニュー表のにもあるのかもしれないと信じていた。
でも今えば、そのメニュー表の裏には恐ろしい請求が隠されていたのだ。
レオはオフィスのを、ゆっくりと歩きした。
キャビネットの隙から、彼のグレーのスラックスが見えた。
アイロンが掛けられ、折り目がピシッとついたスラックスだ。
彼は私のデスクの横にち、指先でテーブルをコツコツと叩いた。
彼はい声で、話の相に説した。
「あのマンションの権利関係はに入ってるし、委任の類も準備してある」
彼は窓のを見ながら、たく言い放った。
「あの古いマンションは、彼女の父親が残したものだ」
彼は指先でデスクを叩く速度をげた。
「がいいから、今売れば結構な額になる」
彼は微かに角をげて、言葉を続けた。
「お義母さんも体がいし、エレベーター付きのマンションに買い替えようと言ってサインさせれば、誰も俺が財産を狙っているなんてわないさ」
胸が激しく締めつけられた。
あの古いマンションは、き父が残してくれたものだ。
父がくにくなり、私が学だった頃、母はで必に働いた。
そしてあのを守り抜き、私を学に通わせてくれたのだ。
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レオは結婚から、あのが私の名義であることをっていた。
でも彼は、しも興がないふりをしていたのだ。
彼はかつて、真面目な顔で私に言っていた。
「お義母さんが残してくれたものは、ゆかが自分でしっかり管理しなよ」
そう言っていた彼の言葉は、あまりにも見事な演技だったのだ。
話の向こうの女が笑ったようで、彼もつられて軽く笑った。
彼はさせるように、優しい声をした。
「配するなよ、怪しまれるようなことはしない」
彼は私のデスクを見ろして、淡々と語った。
「彼女はに脆くて面倒なことを嫌がるし、世体も気にするタイプだ」
彼は勝利を確信したように、言葉を区切った。
「親戚がを揃えて勧めて、お義母さんがすれば、彼女は絶対に頷くよ」
私はスマートフォンをく握りしめた。
指先が真っになるほどだった。
画面はとうに暗くなっていた。
私は本能に録音ボタンを探し、それを押した。
しかしがひどく震えていた。
スマートフォンがキャビネットの板にコツンと当たり、微かな音をててしまった。
レオのきがピタリと止まった。
オフィスは突然、エアコンのの音だけが響く静寂に包まれた。
私は息を殺した。
のが埃でムズムズした。
涙がこぼれそうになるのを、必に堪えた。
で、彼の靴の向きが変わった。
私の方へ歩いてくる音がする。
歩、歩とづいてくる。
カーペットを踏む革靴の音は、とても軽い。
それなのに、私の胸を踏み潰すようにく響いた。
彼はキャビネットのにち止まった。
彼から、ほのかにシダーウッドのの匂いが漂ってきた。
の彼の誕に、私がプレゼントしたものだ。
以は、なんて男らしくないと嫌がっていた。
なのに、私が買ってからは毎つけていた。
からかうと、彼は私の頬をつまんでこう言ったのだ。
「君からのプレゼント、使わないわけにはいかないだろう」
キャビネットので、彼が再びをいた。
彼は話の相に、さく呟いた。
「気のせいか、エアコンの音かな」
彼の声は、あの優しい響きに戻っていた。
彼はデスクに線を移して、言った。
「デスクにマンションの権利や関連類がないか、探してみるよ」
彼は話を切るに、を押した。
「あまりメッセージを送らないでくれ、怪しまれるから」
彼はキャビネットの扉をけなかった。
すでに定を過ぎ、残業するもまばらなオフィスの静けさのだった。
私のデスクの引きしをける音が聞こえた。
段目はペン、段目は付箋とリップクリームが入っている。
段目には、母の誕会のために用したメニュー表やゲストリストがある。
そして昨夜きかけだった買い物リストが入っている。
素く、でも慎にを探る音がした。