"夫の毒膳と孫の告発〜元科捜研妻の科学鑑定〜" 第8話
それはとりもなおさず、私が筑煮をべてたくなっている姿を「発見」し、劇の夫を演じるために予定を切りげて戻ってきたかぬ証拠だった。
私は奥歯を噛み締め、鍵を差し込んで静かに玄関のドアをけた。
廊をみ、リビングのドアノブを回す。
カチャリ、と音が鳴り、部のにを踏み入れると、ダイニングテーブルのにっていた国彦が、弾かれたように振り返った。
その顔には、幽霊でも見たかのような凄まじい驚愕と揺が張り付いていた。
「れ……礼子!? お、今までどこにってたんだ!? 陽太はどうした!?」
狼狽を隠しきれない声で叫ぶ夫に対し、私は氷のようにたい線を向けた。
「陽太なら、りいのところに預けてあるわ」
「そ、そうか……。それより、張から帰ってくるのはじゃなかったのかって、そう言いたいんだろ? 予定が急に変わって、く片付いたから帰ってきたんだよ」
国彦は落ち着かない様子で線を泳がせ、ソファーの背もたれにを置いて呼吸をえようとしていた。
私は歩、へみた。
「……いつからなの?」
「は? 何がだ?」
「いつから、私を殺めようとしていたのかって聞いているのよ」
私の静かな問いかけに、国彦の表が瞬で凍りついた。しかしすぐに、何事もなかったかのように袈裟に両を広げてみせた。
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「な、何を馬鹿なことを言ってるんだ! 俺がおを殺めようだなんて、そんなあり得ないこと考えるわけがないだろう!」
「とぼけないで。あなたが作った筑煮からも、あのサプリメントからも、量の眠薬が検されたわ」
「なっ……!?」
国彦は目を見張り、息を呑んだ。だが、すぐに顔を歪めて醜い言い逃れを始めた。
「そ、それは本当なのか!? とぼけてなんかないぞ! 俺は本当に何もらない! き、所の誰かががにみを持っていて、毒を混入したんじゃないのか!?」
「いいえ。あなた以に犯はあり得ないわ」
「どうしてそう言い切れるんだよ!」
逆して声を荒らげる夫の目を、私は真っ直ぐに射抜いた。
「あの筑煮は、今朝あなたが張へく直に作ったものよ。そして、私がべるその瞬まで、タッパーの蓋には誰のも触れていなかった。……科捜研で精密鑑定をしてもらったのよ。タッパーの容器と鍋の蓋からは、あなたの指紋しか検されなかったわ」
国彦の唇がわなわなと痙攣し、悔しげに顔を歪めた。
「それが……それが何だっていうんだ!」
「検された眠薬の成分は、あなたが療内科で定期に処方してもらっている薬と、分子構造に至るまで完全に致したわ。……これでもまだ、らないと言い張るつもり?」
逃げのない完全な証拠を突きつけられ、国彦はついに観したように肩を落とした。
しかし、その元に浮かんだのは反省や悔のではなく、狂気を孕んだら笑いだった。
「……そこまで調べがついていたのかよ」
「どうして……どうして陽太までにかけるような真似をしたのよ!?」
私のりの叫びに対し、国彦は眉をひそめ、信じられない台を平然と吐き捨てた。
「陽太だけがこのに残されたら、だろうが」
「……なんですって?」
「両親をくして、その、祖母のおまでいなくなってみろ。あいつのが病んでしまうのは目に見えてるだろう。だから、おと緒に国へ送ってやるのが慈ってもんじゃないか」
「ふざけないで!!」
私の号がリビングに響き渡った。
「あの子は、唯と結さんが命に代えて守った、たったつの宝物よ! の命を……が子の命を何だとっているの!?」
国彦は苛たしげにを掻き毟り、ソファーを蹴ばした。
「全部……全部うまくいくはずだったんだよ! おが何も気づかずに、おとなしくポックリ逝ってくれていれば、すべて丸く収まったんだ!」
「丸く収まるって、何がよ……!?」
「子と、緒になりたかったんだよ!」
見らぬ女の名に、私の考が瞬止した。
「……子って、誰よ?」
「料理教の講師だよ! 俺たちは、くしってるんだ!」
国彦は吐き散らすように、自らの倫の全貌を暴し始めた。
それは今から、国彦が料理教へ通い始めた直のことだった。
息子ののしみや妻の病のストレスを講師の子に相談しているうちに、子の方から「頼もしい男性だ」