"妹のドレスを二十センチ切った" 第20話
美玖は、自らので切り落としたいドレスの裾を翻し、バージンロードを逆方向へと歩き始めた。
メートルのロングトレーンが、純の理のを、誇らしげに滑っていく。 裾から覗くのケロイドは、ステンドグラスのを浴びて、もはや傷痕ではなく、過酷な運命をき抜いた戦士の証のように輝いていた。
チャペルのにっていた私は、扉を押しけた。
美玖が、私のまで歩いてきた。 その瞳には、滴の涙もなかった。 あるのは、自分を縛り付けていた鎖を、自らの力で々に打ち砕いた者だけが持つ、圧倒な解放だった。
「お姉ちゃん」 美玖が、悪戯っぽく笑った。
「帰ろ」
「……うん。帰ろう」
私は美玖のを取った。 そのは、今朝の氷のようなたさが嘘のように、驚くほど温かかった。
背から、健さんの絶叫と、加奈子さんのヒステリックな泣き叫ぶ声が、い扉の隙から漏れ聞こえていた。 だが、私たちは度も振り返らなかった。
バタン、とチーク材のい扉が閉ざされ、すべての喧騒が遮断された。
初の爽やかなが、ホテルの寄せを吹き抜けていた。 青くれ渡った京の空の、私たちはタクシーを拾い、あの息の詰まる世界を永ににした。
季節がつ巡り、京のに犀の甘いりが漂い始めた、の終わりのことだった。
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代官の裏通りにある、放なオープンカフェのテラス席。 午の柔らかな漏れを浴びながら、私は運ばれてきたつのカプチーノのカップを見つめていた。
「お待たせ、お姉ちゃん」
聞き慣れたるい声とともに、美玖が歩いてきた。
美玖は、キャメルのトレンチコートを脱ぎ、子の背もたれにかけた。 そのに着ていたのは、膝丈のシンプルなリネンのフレアスカートだった。
素に、歩きやすそうなローヒールのローファー。 美玖が子に腰掛けると、スカートの裾から、の傷痕が何気なく覗いた。 テラス席を通り過ぎる通が、ふと美玖の元に線を向け、すぐにを向いて歩きっていく。 美玖はもう、を引っ込めることも、バッグで隠すこともしなかった。 まるで、腕にあるほくろや、たぶの形と同じように、ただそこにある「自分の体の部」として、自然にに晒していた。
「しい部、どう?」 私が尋ねると、美玖はカプチーノの泡をスプーンですくいながら、嬉しそうに目を細めた。
「最だよ。当たりが良くてさ、ベランダでハーブ育て始めたの。会社からも分だし、誰にも気兼ねなく夜更かしできるしね」
あのの、事態は涛の勢いで推移した。
結婚の止に伴うキャンセル料や違約については、双方が弁護士をてて協議がわれた。
富樫側は当初、美玖の「ドレス切断」と「式での方な破談宣言」を理由に巨額の損害賠償を請求する構えを見せていた。 だが、美玖が持っていた加奈子さんからの数々のモラハラめいたメッセージ履歴や、当の子の、そして何よりチャペルにいた健の会社の役員たちの「あれは富樫側の度を越したパワハラ・モラハラだ」という証言が決定打となった。
結果として、式への費用は折半、互いに慰謝料は請求しないという形で、法な関係は完全に清算された。
健さんは、あの披宴の騒が社内で瞬くにれ渡り、シンガポール支社への栄転は撤回。方の営業所へと異になったと、の噂で聞いた。 加奈子さんは親族から「良の恥晒し」と絶縁同然の扱いを受け、世田の本に引きこもっているという。
母はといえば、最初の数週こそ「美玖が破滅した」「親戚に顔向けできない」と泣き暮らしていた。 だが、美玖が暮らしを始め、自した凛とした顔つきで実を訪れるようになるにつれ、しずつ、自分のしてきた「過剰な世体への執着」の異常さに気づき始めたようだった。 最では、美玖がスカートを履いていても、何も言わなくなった。
「……美玖」
私はコーヒーカップをソーサーに置き、背筋を正した。
美玖が議そうに首を傾げる。
「何? 改まって」
私は膝ので両を揃え、く、をげた。
「あの夜のこと、ずっとちゃんと謝りたかった。