"妹のドレスを二十センチ切った" 第19話
美玖はマイクを持たないで、ドレスの裾をしだけ持ちげた。 のケロイドが、全員の線のに晒される。
「、私は青信号の横断歩でトラックに巻き込まれました。骨は砕け、皮膚は裂け、集治療で、を彷徨いました。何度も皮膚移植を繰り返し、激痛のリハビリに耐え、私は今、こうして自分のでつことができています。この傷は、私が命を諦めず、き延びた証です」
参列者のから、微かな息を呑む音が聞こえた。 商社の専務が、神妙な面持ちで美玖を見つめている。
「しかし、富樫の皆様にとって、そして郎である健さんにとって、このは『決してに晒してはならない恥』であり、『隠蔽すべき欠陥』でございました」
健さんの体が、ビクッとねた。 「美玖、何を……!」
美玖は健を瞥すらしなかった。 言葉を止めない。
「健さんは、私ときりのは『勇敢な勲章だ』と仰ってくださいました。しかし、本の式を迎えるにあたり、富樫から私に課された条件は、この傷を徹底に隠すことでした。窓のない会への変更、くことの許されないキロのドレスの、各卓への挨拶回りの禁止、そして砂の席にを隠すための分い垂れ幕を引くこと」
加奈子さんの顔が、気に変わっていった。 親族席から、揺のざわめきが急速に膨れがる。
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「今朝、このドレスの裾が切れているのを見た健さんとお母様は、私にこう仰いました。『グロテスクな傷を晒して俺に恥をかかせるな』『子に乗り、分いブランケットでを隠して、捻挫をした健気な嫁のふりをしろ』と」
「嘘だ! そんなこと言ってない!」 健さんが叫んだ。 だが、その叫び声は裏返り、あまりにも無様にチャペル内に響いた。 誰の目にも、健が嘘をついていること、美玖が真実を語っていることがらかだった。
美玖は、れむような目を瞬だけ健に向けた。
「私は、健さんをしていました。このを受け入れてくれたのだと、信じていました。ですが、彼がしていたのは私ではなく、『傷のあるな女を救ってやる、寛な自分』という自己満だったのだと、今、ようやく理解いたしました」
美玖はマイクを持ち直し、参列者全体をゆっくりと見渡した。
「傷を恥じ、隠し、誰かの世体のために息を殺してきるを、私は選びません。き延びた自分の体を、汚物のように扱い続けるたちの隣で、涯を終えることはできません」
美玖は、に持っていた本の純のカラーを、祭壇の聖台のに、静かに置いた。 カチャリ、とさな音がした。
「したがいまして、私、藤堂美玖は、本をもって富樫健様との婚約を解消いたします」
――婚約解消。
その決定な言葉が放たれた瞬、チャペル内は騒然となった。 加奈子さんが喉から「あああ……!」と掠れた鳴をげ、そのに崩れ落ちた。 健の父親は、顔を覆ったまま微だにしない。 専務をはじめとする会社関係者たちは、徹な目で健を見ろしていた。 これだけの修羅を公衆の面で晒し、女性の尊厳を踏みにじった男の社内評価がどうなるか、彼らの淡な線が雄弁に物語っていた。
「本の挙式および披宴は、これにて止とさせていただきます」 美玖の声は、最まで凛として、静かだった。 「ただし、お料理とおみ物は、すべて富樫と私どもの方で全額支払いを済ませております。流ホテルの素らしいお事でございますので、皆様、どうぞこのは週末のブランチとして、ゆくまでお召しがりいただき、ご歓談のひとときをお過ごしくださいませ」
完璧な、社交の締めくくりだった。 相の非を徹底にのに晒しながらも、来賓に対する礼儀だけは完璧に全うする。 どちらが「品格」のあるか、そのにいる誰の目にも疑いようがなかった。
「本は、誠にありがとうございました」
美玖はマイクをスタッフに渡すと、参列者に向かって、度の完璧な角度でをげた。
そして。
美玖は踵を返した。
健さんが「美玖! 待ってくれ、美玖!」とすがりつこうと伸ばしたを、優雅にをかわしてすり抜ける。