"離婚11日後、私に9億8000万円が当たった" 第16話
あなたにも」
私はく相槌を打った。
「うん」
母は両を膝ので固く握りしめた。
「だから、あなたを無理にでも達也さんのところへ戻そうとした。それをあなたのためって言ったわ」
母の声がしずつ震え始めていた。
私は再び静かにうなずいた。
「うん」
母は顔を覆った。
肩を震わせて涙を流し始めた。
「ごめんなさい。本当にごめんなさい」
絞りすような謝罪の声が、たいに溶けていく。
以の私なら、泣いている母を見てすぐに寄り添い、その肩を抱きしめていたかもしれない。
「お母さんも苦しかったんだね」と言って、全てを許していたはずだ。
しかし、私はベンチの背もたれから背をさなかった。
母に触れようとはしなかった。
私は静かな声で言った。
「お母さんは、私が同じ目に遭うのを恐れたんだね」
母は顔を覆ったままさくうなずいた。
私はゆっくりと、言葉を区切りながら話した。
「でもね、お母さん」
私の言葉に、母は涙に濡れた顔をしだけあげた。
「私を同じ目に遭わせたくなくて、お母さんは結局、私に同じことをしたんだよ」
母の目がきく見かれた。
私は母の目を見据えた。
「お母さんの親戚が、婚したおばあちゃんを見して追い詰めたように。お母さんも、婚して傷ついた私をのにたせて、見した」
母の元が震えた。
広告
言葉にならない咽び泣きが漏れた。
母は自分ので自分の過ちをなぞるように、くうなだれた。
「そうね。本当にその通りね……」
私はたいので、母の涙が乾くのを待った。
10億円というおが私に与えてくれたのは、に流されず事実を客観に見るだった。
おがなければ、私はそのの活に追われていた。
母を憎むか、母にすがるしかなかっただろう。
私が静かに言った。
「謝ってくれたことは受け取るわ」
母はすがるような目で私を見た。
しかし、私ははっきりと境界線を引いた。
「でも、みたいには戻らない」
私は姿勢を正した。
「何でも『族だから』って踏み込んでいいわけじゃない。私は私ので、私のルールできていく」
母は私の目を見た。
もう私が昔のように言いなりになる娘ではないことを悟ったようだった。
母はさくうなずいた。
「分かったわ」
母はハンカチで涙を拭った。
私たちはそれ以、過を蒸し返すことはしなかった。
しだけ世話をした。
がたくなってきた頃にベンチをった。
帰りは別々の方向へ歩きした。
別れる、母が振り返って言った。
「あの古い、綺麗になったんでしょう。今度、向の顔を見にってもいい?」
私はしだけ考えた。
「来るは必ず先に話をして。勝には来ないでね」
母は微笑んだ。
「ええ、約束するわ」
母はし寂しそうに、でも確かに微笑んだ。
それは、私たちがしい関係を築くためのさな歩だった。
それからさらに半が経過した。
私たちの活はすっかり古いに馴染んだ。
向もしい学で友達を作っていた。
私のパートの仕事も順調だった。
職での信頼もしずつ得られるようになっていた。
専に預けた資産は全に運用されていた。
活の基盤は盤だった。
しかし、静かな常の裏でさな波紋が広がり始めていた。
ある曜の午、の固定話が鳴った。
私が受話器を取った。
懐かしくもし馴れ馴れしい声が聞こえてきた。
「おう、みか。久しぶりだな」
声の主は父方の叔父だった。
私が結婚してからは、冠婚葬祭のにしか顔をわせたことがない相だ。
私は丁寧に答えた。
「おじさん、お久しぶりです。どうされたんですか?」
叔父は声を潜めるように言った。
「みか、史恵さんからし話を聞いてね」
私の胸の奥で、嫌な警報が鳴り響いた。
「話ですか?」
叔父は笑いながら言った。
「お、宝くじが当たったらしいじゃないか。それもとんでもない額だってな」
私は目を閉じた。
母が達也に言ったように、どうやら親戚の集まりか何かでを滑らせてしまったらしい。
私は曖昧に答えた。
「ええ、まあ」
叔父の声は気にを帯びた。
「すごいじゃないか!親父さんも葉のでんでるぞ」
叔父はひとしきり私を持ちげた。
その、本題を切りしてきた。