"目覚めた部下にクビを問われた" 第17話
病が、を打ったように静まり返った。
矢野の叫び声が、壁にね返って消えていく。 その残酷な真実は、病の空気を凍りつかせるのに分だった。
ベッドので、森さんが青ざめた顔で私を見ていた。 その瞳には、かつて見たことのない、い混乱と痛ましさが浮かんでいた。
私は、息をく吸い込んだ。 胸の奥の痛みを、まっすぐに受け止めた。
「……ああ、そうだ」
私の静かな声に、矢野が怪訝そうに眉をひそめた。
「矢野、おの言う通りだ。に予算を削り、現の警告を無したのは、この私だ。私が傲で、旅館の歴史も現の苦労も理解せず、数字だけを追い求めた結果が、この災を引き起こした」
「な……」
「だから、私が責任を取る」 私は矢野の目を、逃げることなく真っ直ぐに見据えた。 「の査問会で、神崎常務と松永ので、すべてを公表する。警察にも、この稟議と私の判断ミスを自ら証言する。業務過失傷害だろうが、解任だろうが、受けてつ」
「正気か……!?」 矢野の声が、裏返った。 「そんなことをすれば、あなたのホテルマンとしてのキャリアは完全に終わりだぞ! 業界から追放されるんだぞ!」
「彼女にを被せてき残るキャリアなど、端から何の価値もない」 私は病のドアを指差した。 「てけ、矢野。度と森さんにづくな」
矢野は悔しそうに歯をいしばり、に散らばった破片を忌々しそうに見ろした。
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「……悔しますよ、支配。の査問会、本社会議はおの墓になるぞ」
矢野は捨て台を残し、逃げるように病をてった。 バタン、とドアが閉まり、静寂が戻ってきた。
病には、私と森さんのだけが残された。
窓のでは、が激しさを増し、ガラスを激しく叩いていた。 元には、引き裂かれた『経緯』のい片が散らばっている。
私は荒くなった呼吸をえ、乱れたスーツのを正した。 そして、ゆっくりとベッドの方を向いた。
森さんは、シーツを固く握りしめたまま、信じられないものを見るような目で私を見つめていた。 その瞳には、恐怖だけではない、もっと複雑な――戸惑いと、痛烈な問いかけが渦巻いていた。
私は、彼女から歩れた位置にった。 これ以、づくことはしなかった。 を差し伸べることも、親しげに名を呼ぶこともしなかった。
私は、テーブルのの黒表のファイルをき、あの赤ペンの×印が引かれたの稟議を、彼女の見える位置に静かに置いた。
「……森さん」
私の声は、く、落ち着いていた。
「今のあなたにとって、私は、あなたを脅し、の誇りを踏みにじって追いそうとした、憎むべき侵略者です。その記憶は、何つ違っていません」
森さんの肩が、ピクリと揺れた。
「私は、自分の未熟さと傲さから、あなたをく傷つけました。
そして、この類にある通り、現の全をないがしろにし、修繕を先送りにして、この災の引きを引きました。すべて、私の罪です」
私はく、々とをげた。 支配としてではない。 のとして、過の自分の過ちを、彼女のに晒した。
「あなたが、私を許す必はありません。いそうとする必もありません。今のあなたが私を恐れ、軽蔑するのは、当然のことです」
森さんは、何も言わなかった。 ただ、ベッドので、荒れた指先をぎゅっと組みわせていた。
「ですが、これだけは真実です」 私はをげ、彼女の瞳を真っ直ぐに見つめた。 「あなたは、あの夜、逃げ遅れたお客様を助けるために、命をかけてのにび込みました。ピンを落としたのは、煙の流入を防ぐための、現の正しい判断でした。あなたは誰として見捨てず、最の最まで、翠閣の客部主任としての職責を果たしたんです」
森さんの瞳が、微かに潤んだ。
「あなたが覚えていなくても、現に残されたあなたの記録が、それを証しています。あなたが築いてきたは、私の傲さや、会社の卑劣な保などで、決して汚されていいものではありません」
私はポケットから、綺麗に折りたたんだ枚のを取りした。 それは、彼女の焦げたバインダーから丁寧に抜き取った、あの耐性の客管理シートのコピーだった。