"目覚めた部下にクビを問われた" 第8話
昨の社員旅。クリスマスイベントの飾り付け。そして、稼働率目標を達成したに全員で撮った、あの庭での集写真。
「ちゃんだけじゃない。フロントも、調理も、みんなあなたが戻ってくるのを待っています。あなたが旅館を、私たちを支えてくれたんです」
も涙を拭いながら、必にを広げて見せた。 「主任、これ見てください! 調理からもメッセージがあります。『美ちゃんのいない朝会はが抜けたようだ、く戻ってこい』って! 支配も、ずっと病院に詰めてくださってたんですよ。支配と主任が緒に作ってくれたしいマニュアルのおかげで、翠閣は息を吹き返したんです。だから……」
の言葉が、を帯びていく。 それは純粋な善だった。敬する司を勇気づけたいという、点の曇りもない祈りだった。
だが。
森さんの表は、枚、また枚と写真を見せられるにつれて、らぐどころか、急速に血の気を失っていった。 彼女の指先が、ガタガタと震え始めた。
「森さん……?」
写真のの森さんは、私の隣で、見たこともないような屈託のない笑顔を浮かべていた。 カメラに向かってピースサインを作り、リニューアルした客ので誇らしげに胸を張っている。
森さんは、その写真を震える指先でつまみげると、まるで得体のれない化け物の皮を見るかのような目で凝した。
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「……これ、誰ですか」
「え?」 が言葉を詰まらせた。
「誰なんですか、この」 森さんの声が、病の静寂を切り裂いた。く、たく、そして切迫した響きだった。 「私……こんなに笑ったりしません。坂井支配の隣で、こんな顔をしてつわけがありません」
「森さん、それはあなた自ですよ。、私たちは確かに衝突しました。私のやり方が引で、あなたをひどく傷つけた。でもその、私たちは話しって……」
「嘘です」
ピシャリと、平打ちをらったような衝撃だった。
森さんはシーツをね除け、激しい呼吸を繰り返しながら私を睨みつけた。 その額の包帯に、じわりとい血が滲んでいた。
「嘘をおっしゃらないでください! 何なんですか、これ……何なんですか、このは! この写真も、このメッセージも……!」
彼女はのからを奪い取ると、恐怖に駆られたようにベッドのに放りした。
「主任、どうして……!」 が怯えてずさりする。
「ちゃん、あなた騙されているのよ!」 森さんは病の胸元を掻きむしりながら、痛な叫び声をげた。 「このは……坂井支配は、私を追いそうとしていたの! 『代わりはいくらでもいる』って、私のをゴミみたいに捨てようとしたなのよ! そんなと、私が緒に笑ってマニュアルを作る? 仲良く旅にく? そんなの……そんなの、あるわけがないじゃない!」
「森さん、落ち着いてください。誰もあなたを騙そうとなんて……」
「じゃあ何なんですか!」 彼女の線が、刃物のように私を突き刺した。 「私が目を覚ましたら、体が痛くて、怪をしていて……周りのはみんな、私のらない『仲良しだった』の話ばかりする! まるで、私が狂ってしまったみたいに! 私が忘れていることをいいことに……あなたたち、私に何を背負わせようとしているの!?」
私のが、に縫い付けられたようにかなくなった。
何を、背負わせようとしているのか。 その言葉の切っ先は、昨、面談で松永たちが企んでいたあのシナリオを、恐ろしいほどの精度で言い当てていた。
記憶を失ったにとって、周囲が致団結して差ししてくる「親の証拠」は、救いなどではない。 自分の志が介しない、のの押し付けであり―― 逃げを塞ぐための、精巧な罠にしか見えないのだ。
「事があったんでしょう……?」 森さんは呼吸を乱し、喉をヒューヒューと鳴らしながら、涙に濡れた顔で言った。 「私……護師さんたちが話しているのを聞きました。別館が燃えて、警察や消防が来ているって……。私が、何か失敗したんですか? 私が旅館に損害をしたから……だから、こんな物を持ってきて、私を言いくるめようとしているんじゃないんですか!?」
「違います! 主任は客を助けたんです!」