"偽りの仕送りと緑の通帳" 第16話
そう言い放たれた恭子さんも、ついにの糸が切れてしまったのだという。
「真美さん、私ね……もう疲れちゃったわ」
話で、恭子さんは掠れた声で言った。
「結婚してからずっと、男の嫁だからって無理難題を押し付けられて、謝されるどころか罵倒されてばかりで……。お母さんはが悪いと言っても、のを歩けないわけじゃないし、本当に困ったら自分で何とかするでしょう。私も、これ以は無理だわ」
そう語る恭子さんの声には、い疲労と、同にようやく荷をろせた堵が混じっていた。
義母は自らの傲さと勝さによって、最も頼りにしていた男夫婦のすら、自ら叩き落としてしまったのだ。
だが――義母が「自分でどうにかする」と息巻いた結果は、あまりにも無惨なものだった。
数週、夫の浩のスマートフォンに、見らぬ番号から話がかかってきた。
話の主は、普段は冠婚葬祭の席で顔をわせるかどうかという、縁の親戚の伯父からだった。浩も最初は名を聞いてもピンとこなかったほどのい柄だ。
「……え? あ、はい……ええっ!? 母さんがですか……? いや、本当に申し訳ありません……!」
話で何度もペコペコとをげ、や汗を流しながら謝罪を繰り返す浩。
台所で夕を作っていた私は、穏な空気をじてを止めた。
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やがて通話を終えた浩は、をガシガシと乱暴に掻きむしりながら、呆れ果てた顔でキッチンへとやってきた。
「……真美、とんでもないことになってるぞ」
「どうしたの? 親戚の方から、何の話だったの?」
浩が語った事の顛末は、いたが塞がらないほど愚かしいものだった。
恭子さんを追いしたことで、から活費を引きす段を失い、々の買い物や費の支払いに困窮した義母。だが、今さら私たちや恭子さんにをげて助けを求めるような殊勝なプライドは持ちわせていない。
そこで義母が何をしたかといえば――話帳を引っ張りし、親戚という親戚に片っ端から話をかけまくり、の無を始めたのだという。
『息子の嫁たちに財産を奪われて、べるものにも困っているのよ! 頼むから今すぐ万……いや、万でもいいから座に振り込んで頂戴!』
そんな見え透いた嘘をつき、齢で暮らしをしている親戚連にまで泣きついてを無したのだ。
あまりの剣幕と異常な内容に審を抱いた親戚のが、真相を確かめるために浩へと連絡を入れてきたのだという。
「……親戚から、完全に呆れられて総スカンをらってるらしいよ」
浩はいため息をついた。
「『あんな性格だから昔から親族のでも嫌われてたけど、まさか内にまでたかり始めるとはわなかった』ってさ。
みんな『もう関わりたくないから話を着信拒否した』って言ってたよ。実の息子である俺たちにすら見放されたんだから、にい親戚がを差し伸べるわけがないだろ」
自業自得、因果応報とはまさにこのことだった。
のを傷つけ、見し、尊厳を踏みにじり続けたが、いざ自分が窮に陥った、誰からもを差し伸べてもらえない。あまりにもれで、あまりにも残酷な孤だった。
その話があってから、私たちの活にはかつてない平穏が訪れた。
毎、義母の顔を伺う必もなく、理尽な暴言に怯えることもない。
こんなにも静かで、穏やかに過ごせる常がよいものだったのかと、私は毎のように実していた。
のには笑顔が溢れ、奈々も以よりずっとるく、仕事の楽しかった来事をたくさん話してくれるようになった。がを取り戻したのだ。
親戚からの話があってから数週が過ぎた頃、がの郵便ポストに通のが届いた。
差の欄には、あの義母の名がかれていた。
封をけると、便箋には嫌になるほど達な文字で、びっしりと文章が綴られていた。性格の悪さに比例して、字も汚ければいいのにと苦々しくいながら目を通す。
そこには、これまでの自分勝な振るいに対する言い訳と、族を傷つけてきたことへの謝罪の言葉が、拙い言葉で並べられていた。