"偽りの仕送りと緑の通帳" 第14話
「……あ、ありがとうね、浩」
珍しく息子に礼をにする義母。の朝にはでもるんじゃないかとうような奇妙な景だった。
だが――落ちてきたのはなどではなかった。
ドガァァァン!!
部の窓ガラスが割れんばかりの、義母の凄まじい号が炸裂した。
「――な、何よこれぇぇぇっ!? どうなってるのよ、これはぁぁぁっ!!」
君代は通帳を握りしめたままガタガタと全を激しく震わせ、ちがらんばかりの勢いで叫んだ。
顔の毛細血管が浮きがり、肌がりで真っ赤に染まっている。
それもそのはずだった。
記帳された通帳の最のページには、毎恭子さんが引きして減っていく活費の引き落とし記録だけが延々と刻まれており――私たちからの【万円の振込】など、どこを探しても文字たりとも印字されていなかったのだから。
「あんたたち……! 送なんて、円もしてなかったじゃないかい!! 毎毎、画面の写真なんか見せて、ずっとこの私を騙していたのね!? この……この、恩らずのでなし共がぁっ!!」
泡をばして絶叫する義母に対し、私は慌てることも取り乱すこともなく、膝のに置いた自分の爪を穏やかに見つめながら、静かに言い放った。
「……お母さん。何をそんなにっていらっしゃるんですか? 私はただ、お母さんの言いつけ通りに、男のところを【見習った】だけですよ」
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「な……何を見習ったって言うのよ!! 恭子さんは毎きっちり万も仕送りしてくれてる派な嫁だよ! あんたみたいな嘘つきの棒猫と緒にするんじゃないよ!」
君代は叫びながら、救いを求めるように隣の恭子さんへと線を向けた。
義母ののには、まだ恭子さんへの盲目な信頼が残っていたのだ。いや、そう信じなければ、自分のプライドが々に砕け散ってしまうからこそ、必にしがみついているのだ。
「もういいわ! 親に仕送りもしないようなケチで卑しい奴らは、うちの族でも何でもない! 今すぐこのからていきなさい! 度とその汚い顔を見せるんじゃないよ!!」
君代は狂ったようにテーブルを叩き、私たちを追いそうと喚き散らした。
隣に座る恭子さんは、青ざめた顔でおろおろと線を泳がせている。
私はゆっくりと顔をげ、狂乱する義母の目を、真っ直ぐに射抜いた。
「……お母さんにとって、族とは、おを差しすだけのなんですか?」
私のく澄んだ問いかけに、君代は瞬だけ言葉を詰まらせ、喉をヒクつかせてをパクパクと魚のように閉させた。
反撃されることなど像もしていなかったのだろう。
だが、義母が何かを言い返すよりもく――私の隣に座っていた浩が、ドンと畳を拳で叩いてをいた。
「母さん。……族ってのはな、おじゃないんだよ」
その声は、これまで私が聞いた浩の声ので、最もく、最も力いものだった。
浩は母親を真正面から見据え、全全霊のいをぶつけるように語り始めた。
「俺たちがこれまで切にしてきたのは、仕送りの額なんかじゃない。族みんなで顔をわせて、緒にご飯をべて、笑いって過ごすや、お互いをいやるだったはずだろ! それを……をさない奴は族じゃないだの、卒は無能だのって……! 母さんのやってることは、族の絆をで買い叩いてるだけじゃないか!」
かつて母親に怯え、逃げ回っていた息子が、自らの志で放った魂の叫び。
その決定な瞬に、私は胸をくし、目がくなるのを覚えた。娘が初めて自分のでった以の、いが胸を満たしていた。
続いて、私の隣にいた奈々が、すっと背筋を伸ばしてく息を吸い込んだ。
そして、澄んだ、凛とした声を部に響かせた。
「おばあちゃん。私は、お父さんとお母さんにおをかけさせないために、自分の志で卒で働くことを選んだの。学歴はないかもしれないけれど……私は今、毎施設のおじいちゃんやおばあちゃんたちに『ありがとう』ってんでもらえる自分の仕事が、好きだし誇りにってる」
奈々の瞳には、もう涙はなかった。揺るぎない誇りとい志のが宿っていた。