"偽りの仕送りと緑の通帳" 第9話
「……そうだったんですか……」
あまりの馬鹿馬鹿しさに、私の全から気に力が抜けていった。
だが同に、の底から分いがれ渡っていくような、烈な堵が胸を満たした。
がが非だったわけでも、私たちが劣っていたわけでもなかったのだ。義母が勝に作りげたれな虚栄に、私たちはただ方に踊らされ、傷つけられていただけだった。
「本当に、ごめんなさいね真美さん。まさかお義母さんが、そのことを使って真美さんたちをそんなに追い詰めてるなんてらなくて……」
申し訳なさそうに眉を寄せる恭子さんに、私は慌ててを振った。
「いいえ! 教えていただけて本当によかったです。なんだか、肩の荷がりたというか……胸のつかえが取れました」
ホッと胸を撫でろす私を見て、恭子さんも「よかった」と優しく微笑んだ。
そして、恭子さんはしい目をして、ポツリと漏らした。
「実を言うとね、真美さん。私もね……昔からずっと、お義母さんの理尽な態度には傷つけられてきたのよ」
その告は、私にとってなからずなものだった。
義母はいつも恭子さんのことを「自の男の嫁」として持ちげていたからだ。義母に気に入られているものとばかりっていた恭子さんにも、いの傷があったのだ。
「……昔ね、お義母さんの歳の古希のお祝いの事会をいたことがあったの」
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恭子さんは苦々しい表を浮かべ、当の記憶を繰り寄せるように語り始めた。
恭子さんは結婚、製菓学に通っていた経験があり、プロのパティシエ顔負けのお菓子作りの腕を持っていた。その誕会のために、恭子さんは何もから構を練り、級なフルーツと最級のクリームをふんだんに使った、見事な段ねのアニバーサリーケーキを作りして持参したのだという。族みんなでお祝いしようという、純粋な善と真からのプレゼントだった。
ところが――実のテーブルのにそのケーキを広げた瞬、義母の君代は顔を骨に歪め、盛にを鳴らして言い放ったのだそうだ。
『……何よこれ。作りのケーキ? ふん、デパートの名のケーキでも買ってくるかとったら、たかが作りなんて、おを円もかけてないがりなゴミじゃないの。私の古希の祝いが、こんな物で済まされるなんてねぇ。私をバカにしてるのかしら!』
悪魔のような暴言だった。
族ので丹精込めたケーキを侮辱され、踏みにじられた恭子さんは、そので血の気が引き、そのの事会の記憶がなくなるほどのショックを受けたという。
「あのは本当にショックでね……悔しくて、しくて、に帰ってから何も涙が止まらなくて、ご飯も喉を通らなくなっちゃったのよ。
さすがに、あんな酷いことを面と向かって言う、普通じゃないでしょう?」
恭子さんは自嘲気にさく笑った。
「今でこそ、こうやって笑って話せるようになったけどね。あのお義母さんには、最初からのなんて通ってないのよ」
のを平気で踏みにじり、善を悪で返す義母の醜悪さ。
恭子さんの話を聞きながら、私はりと共に、義母というの本質を完全に理解した気がした。あのには、どんな温かいも、謝も、も届かないのだ。
「……恭子さん、お代わりを取ってきますね」
私はちがり、しいお茶を淹れるためにドリンクバーへと向かった。
ガラスポットからちるハーブのりを吸い込みながら、私ののを、義母がこれまで吐き捨ててきた言葉が猛スピードで駆け巡った。
『兄嫁のところを見習いなさいよ!』
『きちんと毎仕送りできる庭を見習ったらどうなの!』
(……見習え、ね)
お茶をカップに注ぐ私のが、ピタリと止まった。
ので、バラバラだったパズルのピースが瞬にして組みわさっていくような、鮮烈な閃きがった。
義母は常々、を酸っぱくして「男のところを見習え」と言い続けていた。
そして、その男夫婦が実際にやっていることの正体は――【仕送りなど円もせず、義母自の座からおを引きして渡しているだけ】だったのだ。