"偽りの仕送りと緑の通帳" 第6話
画面に表示された『義母』の文字を見ただけで、胃の奥がキュッと収縮する。私は呼吸を度し、指先を滑らせて通話ボタンを押した。
「……はい、佐藤です」
『あ、真美さん? ちょっと、このの話の続きだけどねぇ!』
受話器の向こうから、挨拶も置きもなく、君代のヒステリックな甲い声がび込んできた。
『あんたたち、いつになったら親への仕送りを始める気なの? 族なんだから、親に仕送りをするのは子供として当たりの義務でしょうが! まさか、このままらん顔して逃げ切るつもりじゃないでしょうねぇ!?』
話越しでも分かるほど、義母の声には侮蔑と催促のトゲが満ちていた。
私は話の受話器をしからし、努めて静な声を取り繕って尋ねた。
「……お母さん。ちなみにですが、仕送りというのは、おいくらほどを希望されているのでしょうか?」
すると、話の向こうで君代は「ハッ!」と盛にを鳴らしてせせら笑った。
『まあ! そんな当たりのことをわざわざ聞くなんて、本当に恥ずかしいねぇ! 自分ので考えられないのかしら。まあ、男のところの恭子さんはね、毎きっちり万円も振り込んでくれてるわよ。あんたたちのがいくらせるのかはらないけれど、まさかそれ以なんて恥ずかしい真似はできないわよねぇ?』
クスクスとの悪い笑い声を残し、義母は方に話を切った。
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ツコツコと鳴る無質なツーツー音を聞きながら、私はスマートフォンの画面を落とし、肺のの空気をすべて吐きすようにく、いため息をついた。
カチャカチャ、ピコピコ。
リビングのソファの方から、軽なゲームの操作音が響いてくる。
線を向けると、休の昼がり、パジャマ姿のままソファに寝転がってスマートフォンをいじっていた夫の浩が、鬱陶しそうに眉をひそめてこちらを見ていた。
「……なんだよ、真美。さっきからでかい溜息なんかついてさ。せっかくの休みなのに、気分が滅入るだろ」
浩は画面から線をげることすら億劫そうに、片で画面をスクロールさせながら呟いた。
私は奥歯を噛み締め、ちがって夫の向かい側のローテーブルのに腰をろした。
「浩、ちょっと話を聞いて。今、お母さんから話があったの」
「……あ? 母さんから?」
浩は面倒くさそうに返事を返したものの、その指先はスマートフォンの画面を忙しなくタップし続けている。私の顔を見ようともしない。
「お母さん、私たちにも毎万円の仕送りをしろって言ってきたわ。男のところを見習えって。浩、今のうちの計で、毎万なんてをせるわけがないでしょう? あなたの会社のお料だってがったままだし、々の活だって切り詰めてるのよ。
あなたがちゃんとお母さんに、うちは無理だって断ってよ」
私は必になって訴えかけた。夫の目を見て、現実を直してもらおうとした。
だが、浩は私の言葉が終わるか終わらないかのうちに、あからさまに嫌そうな顔をして眉根を寄せ、スマートフォンを握り直した。
「……チッ、そんなこと言われたってなぁ。俺に言われても困るよ」
「困るって何よ! あなたのお母さんでしょう!?」
「だいたいさ、のこととか親戚付きいのことは、ずっと真美に任せてただろ。俺は仕事で疲れてるんだよ。そういう細かい面倒な話は、真美の方で適当にうまくやっといてくれよ」
そう吐き捨てると、浩はソファからよっこらしょとを起こし、スマートフォンの画面を見つめたまま、にリビングをて脱所へと向かってしまった。
「ちょっと浩! 逃げないでよ! 私に押し付けないで!」
私が脱所のドアに向かって声を張りげると、廊の奥から、カチャリと呂の鍵が閉まる音と共に、浩の笑いを浮かべたような乾いた声が返ってきた。
「頼んだぞー、真美に任せるからなー」
ドッと全の力が抜け、私はそのにへたり込んだ。
本当に、この男はどうしようもない。
義母が私や奈々に対してどれほど酷い暴言を吐いていても、に入って庇ってくれるわけでもなく、義実に呼びされても仕事や体調良を理由にして逃げ回るばかり。