"祖父が私に遺した最後の拒否権" 第10話
その、誰にも言わずに先祖代々の林を束文で叩き売って、健の借をを揃えて返済したのが……源造だったんだよ」
らなかった。 そんなこと、母からも、父からも、度も聞かされたことはなかった。
「源造はな、健のプライドを守るために、その話を所にも、おたち娘にも切漏らさなかった。『自分が騙された』という事実を受け止めきれず、現実から逃げるために、さらに酷い沼にび込もうとする。それが健の病気だ。源造はそれを骨の髄までっていた」
鈴は、私の目をまっすぐに見据えた。
「今回、健が持ってきた買い……あの物流会社の件、源造も入院する直にに挟んでいたよ。だから俺に言ったんだ。『鈴、健はまた同じことをやる。に目が眩んで、相の正体も見ずにびつく。あいつにでハンコを持たせたら、今度こそ佐伯のは破滅する』ってな」
「破滅……? どうしてですか? 千百万で買い取ってくれるって、契約には……」
「咲ちゃん。その契約、ちゃんとした専に見せたかい?」
鈴の問いかけに、私は息を呑んだ。
昨は、津が持ってきた契約の概版と、同の文面しか見ていなかった。 だが、元には昨、津が「目を通しておいてください」と置いていった、約ページに及ぶ売買契約と特約事項の控えのコピーが、バッグのに入っている。
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「松永先以の……産トラブルに詳しいに見せなさい。松永先は登記の専だが、あのの発業者が仕掛ける『罠』までは踏み込んで止められんだ。駅の商会議所に、俺の息子の輩がやってる政士の事務所がある。そこへ今すぐきなさい」
鈴はメモ用に名と話番号をりきし、私に押し付けた。
「源造が止めたかったのはな、『を売ること』じゃない。健がまた、破滅の穴に自分からび込むことだ。そして……元に何の利害関係もない、京で自分のでってるおだけが、そのブレーキを踏めるだったんだよ」
***
駅の雑居ビルにある政士事務所のドアを叩いたのは、正午をし回った頃だった。
鈴の紹介で会ってくれたのは、代半ばの、作業着姿の似う実直そうな政士・藤だった。 藤は、私が差しした契約のコピーをパラパラとめくり、最初は「よくある林・農の発売買ですね」と淡々と言っていた。
しかし、半の「特約条項」のページに差し掛かった瞬、彼の眉が険しく寄った。
蛍ペンを持った藤のが止まる。
「……佐伯さん。これ、もうサインしちゃいましたか?」
「いえ。まだです」
藤は、くホッと息を吐きし、鏡をして額を擦った。
「危ないところでしたね。
これ、典型な『抜き型』の買い叩き契約ですよ」
「抜き型……?」
藤は、契約の第条、そして別の特約事項の細かな文字を、ペンの先でトントンと叩いた。
「ここです。『本件はにわたり果園として利用されていた経緯に鑑み、売主は引渡しヶ以内に買主がう盤調査・環境調査において、特定害物質(ヒ素、、鉛等)の基準値超過、あるいはコンクリート殻、旧農業用配管、巨等の障害物が発見された、買主が指定する施業者による壌入替および障害物撤にする実費を全額負担するものとする』」
ので、警報が乱打される。
「実費を……負担?」
「ええ。それだけなら、般な瑕疵担保特約――今でいう契約適責任の変形として見えなくもない。ですが、問題はその次です。『当該撤費用は売買代と相殺、あるいは売買代決済であっても売主に対し別途請求できるものとし、その限度額は売買代総額の百分のを限とする』」
「パーセント……!?」
私はわず子から腰を浮かせた。
千百万円の、パーセント。 千百万円。
「そうです」 藤はたい現実を告げた。 「果園なんてものはね、も農薬を撒き続けていれば、表から微量のヒ素や属がるのは当たりなんです。しかも裾の傾斜ですよ? 造成すれば、昔の暗渠排のパイプやら、墾に埋められた巨がいくらでもてくる。