"母を遠ざける姉の嘘" 第20話
その代わり――」 私はペン先をテーブルにトントンと当てた。
「お姉ちゃんは、このからしれなさい」
美咲が、ハッと顔をげた。
「れるって……お母さんを放りせって言うの!?」
「放りせなんて言ってない。週に半分は、このに来ちゃダメだって言ってるの」
私は美咲の目をしっかりと見つめた。
「デイサービスやヘルパーさんが入るは、お姉ちゃんは実に来ないこと。自分のアパートにいて、自分の仕事を探しなさい。スーパーのレジ打ちだけじゃなくて、もっとちゃんとした仕事を探すか、のコミュニティに入りなさい。友達を作りなさい。習い事でも何でもいい。……お母さん以のと関わるを、制に作りなさい」
「そんなの……急に言われたって……」
「やらなきゃダメよ」私はい調で言った。「お姉ちゃんが自分のを取り戻さない限り、また同じことが起きる。お母さんがデイサービスでに笑顔を見せるたびに、お姉ちゃんはまた嫉妬して、お母さんを閉じ込めようとする。……そんな獄、もう度と繰り返させない」
美咲はさく震え、マグカップを両で包み込んだ。 その指先が、温もりを求めるようにカップの陶器に触れている。
「それから、もうつルールを作る」 私は自分のスマートフォンを取りし、画面をタップした。
「今、LINEにしいグループを作った。
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『』っていうだけのグループ。……これからは、お母さんの病院のことも、介護のことも、おのことも、全部このグループで話す。誰かがに入って伝言するのは、今で輪際、禁止」
美咲のスマホが、テーブルのでピロンとさな音をてた。
「お母さんにも、、シニア向けのスマホを買いにく。私が契約して持たせる。話線のモジュラーケーブルも、絶対に度と抜かせない。……私が野に帰るは、私が自分で幹線のチケットを取って、お母さんに直接連絡して帰ってくる。お姉ちゃんの許なんて、もう度と取らないから」
それは、完璧な主導権の剥奪だった。 美咲がかけて築きげてきた、母親への報の独占を、根底から解体する宣告だった。
美咲は画面に表示されたグループLINEの通をじっと見つめていた。 やがて、く、い溜息を吐きした。
「……あんた、本当にくなったわね」
自嘲気な、しかしどこか憑き物が落ちたような声だった。
「昔は、私のろにくっついて泣いてばかりいたくせに。……京の空気って、をそんなに図々しくさせるわけ?」
「図々しくならなきゃ、族なんて守れないよ」 私はしだけ笑って、めかけたコーヒーをみ干した。
「お姉ちゃん。私、お姉ちゃんに謝してないわけじゃないんだよ」
美咲が顔をげる。
「この、お父さんがんでから、お母さんのそばにいてくれたのは違いなくお姉ちゃんだよ。私が京で仕事に打ち込めたのは、お姉ちゃんが野にいてくれたから。……そのことには、今でもから謝してる」
美咲の瞳に、再び涙が滲んだ。 今度は、りでも絶望でもない、静かな涙だった。
「でもね、謝することと、共倒れになることは違う。……お姉ちゃん、もう分だよ。もう、お母さんのの代わりになるのは、終わりにしなよ」
美咲は両で顔を覆い、肩を震わせた。 声をさずに、静かに泣いていた。
夜がける頃、たいは止み、の空がみ始めていた。
*
翌の曜、私は母を連れて駅の量販へき、画面のきなシニア向けのスマートフォンを購入した。 文字の打ち方と、LINEのき方を、居のこたつで根気よく母に教えた。 母のはまだ震えていたけれど、「これなら、いつでも千佳の顔が見られるね」と、嬉しそうに目を細めていた。
美咲は、午にしだけ顔をしたが、余計なしはしなかった。 私が買ってきたスマートフォンの説を黙って読み、充器をコンセントに差し込んでくれた。
午。 私はキャリーケースを引き、玄関のにった。 美咲が、で田駅まで送ってくれるという。
「お母さん、また来来るからね。
幹線のチケット、もう取っちゃうから」
母は玄関先まで杖をついて見送りに来てくれた。 その首元には、私が送ったのカシミヤのストールが、かそうに巻かれていた。