"母を遠ざける姉の嘘" 第19話
美咲が抵抗しようとをよじる。 けれど、骨と皮ばかりになった母の腕は、驚くほどの力で、女の体をさなかった。
「お母さんね……怖かったのよ」 母の涙が、ボロボロと美咲の黒髪のに落ちていく。
「お父さんがんで、もかなくなって……自分がどんどん役にたない寄りになっていくのが、怖くてたまらなかったの。千佳は京で自して、もう私がいなくてもきていける。でも、美咲は……美咲だけは、私のそばにいてくれた」
母は美咲の背を、何度も、何度もさすった。
「あんたが私のために仕事を辞めた、本当は止めなきゃいけなかった。あんたのをかせなきゃいけなかった。……でもね、お母さん、の底でホッとしちゃったのよ。『これで美咲は、どこへもかないで私を見ていてくれる』って……そうっちゃったのよ」
美咲のきが、ピタリと止まった。
「話線を抜かれたも、千佳からのを隠されたも……お母さん、本当は気づいてたのよ。美咲がおかしなことをしてるって、分かってた。……でもね、注できなかった。美咲をらせたら、美咲が私を置いてていっちゃうんじゃないかって……ぼっちで、このでぬのが怖くて……だから、美咲の言う通りにしてたの」
母の声は、もはや慟哭だった。
「お母さんが、あんたを縛り付けたのよ。お母さんのさが、あんたのを奪ったの。
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……美咲、ごめんね。あんたを、こんな鬼みたいな顔にさせちゃって……本当に、ごめんね……!」
「お母さん……っ」
美咲のから、子供のような泣き声が漏れた。
頑なに張り詰めていた姉の体が、急速に力を失っていく。 美咲は母の胸に顔を埋め、両で母のいカーディガンを握りしめた。
「お母さん……私、悔しかったの……っ。私だって、普通にきたかった……っ。お母さんをみたくなかった……! 千佳を憎みたくなかったよ……っ!!」
、閉ざされた部ので、互いを質にしってきた母と娘が、畳ので抱きって泣き崩れていた。
私はその景を、ただ静かに見つめていた。 頬を、筋のい涙が伝い落ちていく。
加害者も、被害者もいなかった。 あるのは、老いる恐怖と、取り残される恐怖。 族という名の閉じた器ので、を見失ったつの孤独が、互いを傷つけいながら絡みっていただけだったのだ。
*
夜のを回った頃。 泣き疲れた母を寝へ連れてき、布団に寝かせた。 母は美咲のを度だけ々しく握り、それからい眠りに落ちていった。
居には、私と美咲のが残された。
散らばっていた類の破片をゴミ箱に捨て、え切った番茶を流しに捨てて、私はしいお湯を沸かした。 マグカップにインスタントのコーヒーをつ淹れ、こたつ板のに置く。
美咲は、目を真っ赤に腫らしたまま、ぼんやりと湯気を見つめていた。 その顔には、先ほどまでの攻撃な毒気は完全に抜け落ちていた。 ただ、全てを失って空っぽになったような、痛々しい疲労だけが漂っている。
「……どうする気?」 美咲が、掠れた声で呟いた。
「あんたが正しかったわよ。私は母親を監禁して、自分のプライドを守ってただけの、最のよ。……警察にでも何でも訴えればいいじゃない」
「そんなこと、するわけないでしょ」 私は美咲の正面に座り、コーヒーをんだ。 苦が、疲れた喉に染み渡る。
「お姉ちゃん、現実な話をしよう」
私はバッグから、帳とペンを取りした。
「まず、母の介護認定は、このままめる。取りげない」
美咲がピクリと眉をかしたが、もう鳴る気力はないようだった。
「佐伯さんと話して、ケアマネジャーをつけてもらう。週に回か回、デイサービスに通ってもらうし、訪問ヘルパーも入れる。……費用は、介護保険の自己負担分も含めて、毎かかるおは全部私が京からす」
「……私が、払えないとでもってるの?」美咲がを張るように言った。
「払えないでしょ」私は容赦なく現実を突きつけた。「お姉ちゃんのパートの料で、母の介護費用まで全部賄えるわけがない。今まで私が振り込んできた万円、全部消えてたじゃない。
活費だけでギリギリだったんでしょ?」
美咲は唇を噛み、俯いた。
「おのことは、私が全部引き受ける。