"母を遠ざける姉の嘘" 第17話
とをげていたかもしれない。
けれど、今は違う。 私は、この冊のファイルをすべて読んだのだ。 この狂気の裏側に隠された、あまりにも惨めで、しい真実を、ってしまったのだ。
「聖域?」 私は静かにをいた。
「お姉ちゃん、ここは聖域なんかじゃないよ。ここは、あなたが作った檻だ」
「何ですって……?」
「お母さんを閉じ込めて、私を追いして、所のとの関わりも全部断ち切って……。お母さんが誰とも話せないように、話線を抜いて、カレンダーに命令をき込んで。……そうやって、お母さんを世界から切りして、何がしたかったの?」
美咲は唇を噛みしめ、ギリギリと奥歯を鳴らした。
「……お母さんを守るためよ。あんたみたいななに、お母さんを傷つけさせないためよ」
「嘘をつかないで」
私は番のファイルをき、美咲の目のに突きつけた。 赤ペンでびっしりとかれた、あのの付。
「これ、お姉ちゃんがいたんでしょう? 『で婚活に失敗して、正社員を辞めて、友達の連絡先を消して、お母さんのの世話をしてきた私のはどうなるの?』って」
美咲の瞳が、激しく揺らいだ。
私はページをめくった。 淡々と、しかし語語を美咲の鼓膜に叩きつけるように、誌の文字を読みげた。
「『が入ってきて、お母さんがデイサービスで笑って、に謝するようになったら、私は何のためにここにいるの?』」
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「やめて……」
「『お母さんは、私がいなきゃきていけない。それでいい。このは、私だけのものだ』」
「やめなさい!!」
美咲がを伸ばし、ファイルを叩き落とそうとした。 私はその首を、咄嗟にく掴んだ。
骨張った、たい首。 ドラッグストアの品しや、のたい仕事で荒れ果てた、赤くひび割れた皮膚。 その触がのひらに伝わってきた瞬、私の胸に鋭い痛みがった。
「お姉ちゃん」 私は美咲の首を握ったまま、その目を真っ直ぐに見据えた。
「お姉ちゃんは、お母さんを介護してたんじゃない。……お母さんを質にして、自分のの言い訳にしてたんだよ」
美咲の息が、喉の奥で止まった。
「、私が京の学にく、お姉ちゃんは『野に残る』って言ったよね。お父さんもお母さんも、元のをてくに就職したお姉ちゃんを誇らしげに見てた。……でも、にお父さんがくなって、お母さんの膝が悪くなった、お姉ちゃんので何かが狂い始めた」
美咲の瞳から、すっと焦点が消えていく。 私は言葉を止めなかった。この膿をし切らなければ、私たちは、この呪縛から抜けせない。
「お姉ちゃんは、自分から仕事を辞めたんじゃない。職の関係がうまくいかなくなって、結婚相談所でも相が見つからなくて、自分のにき詰まったに……ちょうどよく現れたのが、『介護が必になったお母さん』だったんだ」
「違う……!」美咲が掠れた声で否定しようとする。
「違わないよ! お姉ちゃんは、自分から介護に逃げ込んだの! 『親の面倒を見る優しい女』という板を背負えば、社会から逃げられるから! 結婚できなかったことも、仕事でキャリアを積めなかったことも、全部『親のために自分を犠牲にしたからだ』って、正当化できるから!」
「黙れ……黙りなさいよ……!」
美咲の肩が、刻みに震え始めた。
「そしてね、お姉ちゃんは京にいる私が羨ましくて、憎くてたまらなかった。私は自由に京で働いて、好きなを買って、自由なをきていたから。だから、私からお母さんを奪ったの。私を悪者にして、お母さんに『千佳はあんたを見捨てた』って吹き込んで……。そうすれば、お母さんは世界でお姉ちゃんだけを頼るようになるから!」
私の声が、自然とを帯びて震えた。
「お母さんがのデイサービスにって、に謝するようになったら困るのよね? お母さんが元気になって、で歩けるようになったら困るのよね!? だって、お母さんに『美咲、ありがとう。でももうで丈夫よ』って言われたら……お姉ちゃんには、何つ残らないから!!」
「ああああああっ!!」
美咲が、を塞いで絶叫した。
私のを乱暴に振り払い、畳のにへたり込む。 その顔は涙と汗でぐしゃぐしゃに崩れ、い黒髪が乱れて頬に張り付いていた。