"母を遠ざける姉の嘘" 第15話
違っていた。 母は、ただの被害者なんかじゃなかった。
母は、っていたのだ。 美咲が私を排除していることも、美咲が自分を界から遮断していることも、全部々気づいていたのだ。 それでも、母は美咲の支配を受け入れた。 美咲の歪んだ独占欲を満させるために、自ら「無力で、で、美咲だけを頼りにするれな母親」の仮面を被り続けていたのだ。
なぜなら――そうしていれば、美咲が絶対に自分を捨てないと分かっていたから。 京へ逃げた次女ので活を支えさせ、元に縛り付けた女の罪悪と自己犠牲を利用して、自分の老の全を買い取っていたのだ。
「……とも、同じだったんだ」
私のから、え切った、乾いた声が漏れた。
母がピタリと泣き止み、息を呑んで私を見げた。
「美咲ちゃんはお母さんを独占して、『自分は必とされている』ってい込みたかった。……そしてお母さんは、美咲ちゃんのその歪んだ気持ちを利用して、自分がでぬ恐怖から逃げてたんだ」
「千佳……あんた、何を……」
「で、共犯だったんじゃない」
私のの甲についたいお茶の滴が、ポタポタと畳に落ちていく。 その痛みすら、もう何もじなかった。
「お母さんは美咲ちゃんに依して、美咲ちゃんはお母さんを支配して……そうやってだけの世界を作って、から見てる私には『お母さんが認症だから来るな』『妹が酷だから寄り付かない』って嘘をついて……。
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で私の罪悪を吸いげて、きてきたんだね」
。 私が京で抱え続けてきた、あの息苦しいほどの罪悪。 美しいものをべるたびに痛み、しいを買うたびに疼いていた、あのの傷。
それは、このが作りげたグロテスクな共関係の、都のいい「燃料」に過ぎなかったのだ。
「違う……違うよ、千佳……お母さんはただ……」 母の声がさく震え、うようにして私の膝にを伸ばしてきた。
私は、そのを静かに、しかし酷に避けた。
母のが、空を掴んで畳のに落ちる。
「もういいよ、お母さん」
私はちがった。 元に転がっていた、握り潰された申請の控えを拾いげる。 破れ、皺だらけになったそのを、指先で丁寧に伸ばした。
りは、もう消えていた。 涙も、滴もなかった。 ただ、どこまでも透で、たい決だけが、私の背骨を真っ直ぐに貫いていた。
私は台所へき、雑巾を持ってきて、こたつ板のにぶちまけられたお茶を拭き取った。 母は畳のに座り込んだまま、幽霊のように青ざめた顔で、私の無言の作業を見つめている。
計の針は、午を回っていた。 窓のは、急速に濃紺のへと沈んでいく。
え込む居に、くからのエンジン音が響いてきた。 砂利を踏みしめる音。 ブレーキの軋む音。
美咲が、帰ってきたのだ。
私がまだこのに残っているともらずに。 妹を追いし、再び母親ときりの、歪んだ王国を取り戻したと信じ込んで。
私は居の卓の周りに、つの座布団を並べた。 つは母の席。 つは私の席。 そして、もうつは――。
カチャリ、と玄関の鍵がく音がした。
私は玄関へ向かい、靴を脱ぎ捨ててがろうとした美咲のに、音もなくった。
美咲が息を呑み、袋を取り落としそうになる。 その顔に、信じがたいものを見たという驚愕と、激しいりが浮かびがった。
「……千佳!? あんた、どうしてまだ……!?」
私は美咲の言葉を遮り、彼女の腕の横をすり抜けて、玄関のドアの鍵を内側からカチャリと閉めた。 それだけではない。 ドアガードの属のバーを、しっかりとスロットに落とし込んだ。
逃げを塞ぐ、い属音が玄関に響き渡る。
「何してるのよ!?」美咲が叫んだ。
私は振り返り、狂気と疲労に満ちた姉の目を、真っ直ぐに見据えた。
「美咲ちゃん、がって」
私の声は、夜ののように静かだった。
「こたつに、お茶が入ってる。で、このの話を全部終わらせよう」
玄関のドアガードを落とした属音が、静まり返ったのにく響き渡った。
美咲はコートを着たまま、(たたき)のでち尽くしていた。 には、コンビニのビニール袋がぶらがっている。
に入っているのは、特売の納豆とパン、それから値引きシールの貼られた惣菜のパック。