"母を遠ざける姉の嘘" 第14話
お友達だってお喋りできるし、美しいお昼ご飯もるんだよ」
「……デイ、サービス……?」 母の声が、掠れていた。
「そう。それにね、ヘルパーさんがに来て、お掃除もご飯の支度も伝ってくれる。費用は割負担で済むし、そのおは全部、私が京から送るから。お母さんも美咲ちゃんも、円も配しなくていいの」
私は微笑みかけた。 母をさせたくて、精杯の笑顔を作った。
「だからね、もう美咲ちゃんの顔を窺わなくていいんだよ。話線を抜く必もない。お姉ちゃんが鳴り込んできても、今度は役所のやケアマネジャーさんがに入ってくれるから。お母さんは、自分の好きなようにきていいの」
――これで、救われる。 母は泣いてんでくれるはずだ。 「ありがとう」と、私のを握り返してくれるはずだ。
私は、そう信じて疑わなかった。
けれど。
私の言葉が終わった瞬、母の顔から、すべての表が抜け落ちた。 見かれた瞳の奥に浮かびがったのは、歓びでも、堵でもなかった。
それは――剥きしの、底れない「恐怖」と「激」だった。
「……あんた」
母のから漏れたのは、今まで度も聞いたことのないような、く濁った声だった。
「あんた……何てことを、してくれたんだい……?」
「え……?」
私の考が、瞬止した。
次の瞬だった。
バッシャアアンッ!!
激しい音とともに、いお茶がこたつ板面にぶちまけられた。
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母が、目のにあった湯呑みを、力任せに薙ぎ払ったのだ。
「あつっ……!?」
び散った湯が、私のの甲とスカートを濡らす。 急須が転がり、畳のに濃い茶の染みが広がっていく。
「お母さん、何するの――」
「何てことをしてくれたんだいって聞いてるんだよ!!」
母が、絶叫した。
歳の、骨と皮ばかりに痩せ細ったはずの母が、こたつ板に両をつき、鬼のような形相でを乗りしていた。 喉を引き裂くような、切り声。 その目には、真っ赤な血ったりと、狂気のような怯えが満ち満ちていた。
「あんたは! あんたはそうやって、いつも京から勝なことばかり持ち込んできて! 私の活をぶち壊す気かい!?」
「な……何を言ってるの? 私はお母さんを助けたくて――」
「助ける!? 誰が助けてくれなんて頼んだんだよ!!」
母は震えるで、テーブルのの申請の控えを鷲掴みにした。 そして、クシャクシャに握り潰すと、力任せに私の顔面に向けて投げつけた。
の角が、私の頬をパチンと叩いてに落ちる。
「美咲が……美咲がこれをったら、どうなるか分かってるのかい!? 『お母さんは私を裏切って、を頼ろうとした』って……美咲が、私を捨てるじゃないか!!」
母は自分の髪を両で掻きむしりながら、畳ので狂ったように泣き叫び始めた。
「美咲がいなくなったら、誰が毎のご飯を持ってきてくれるんだい!? 夜に痛むこのを、誰がさすってくれるんだい!? あんたが野に帰ってきて、私のの世話をしてくれるのかい!? してくれないだろうが! あんたはどうせ、続きだけして、綺麗なおを振り込んで、また全な京へ逃げ帰るんだろうが!!」
臓を、太い杭で気に貫かれたような衝撃だった。
息が、吸えなかった。 界が、ぐらりと揺れた。
母のから吐きされる罵詈雑言の数々。 それは、昨美咲が私に向けて放った言葉と、寸分違わず同じものだった。
『あんたはいいとこ取りしかしてないのよ!』 『現でをすする苦しさを、あんたが秒でもわったことがあるの!?』
美咲の言葉じゃない。 母自が、の底からそうっていたのだ。
「お母さん……私……」
「余計なことをするんじゃないよ!!」
母は涙とでぐしゃぐしゃになった顔を歪め、私を親の仇のように睨みつけた。
「私が……私がどれだけ美咲の嫌を取ってきてるか、あんたにわかるかい!? 美咲に『ありがとう』って言って、美咲の言う通りにして、話線も抜かせて、あのカレンダーの通りにいて……そうやってをげてなきゃ、あの子はどっかへっちゃうんだよ! あの子がいなくなったら、私はこの暗い部で、で野垂れぬしかないんだよ!!」
ぼろぼろとこぼれ落ちる母の涙。 その涙の正体をった瞬、私の胸のにあった「美咲=加害者、母=被害者」という綺麗な構図が、音をてて々に砕け散った。