"母を遠ざける姉の嘘" 第13話
佐伯さんは息を呑んだ。 その瞳に、単なる事務な対応を超えた、福祉の現につとしてのい緊張がる。
「……それは、らかな『理虐待』および『介護者による抱え込み・社会孤』のケースです。千佳さん、ご族であるあなたがいてくださるなら、私たちは今すぐにでもけます。もう度、介護認定の申請をしませんか?」
佐伯さんはデスクの引きしから、枚の複写式の申請用を取りし、私のに滑らせた。
「実の娘さんである千佳さんの署名があれば、申請は受理できます。来週にでも認定調査員をご自宅へ派遣します。介護度がつけば、ケアマネジャーが入り、デイサービスの配も、ヘルパーの派遣も、すべて公にめられます。お姉様ので止めることは、もう法にできません」
いのに印刷された、「介護認定・支援認定申請」の文字。
これだ。 これがあれば、母をあの暗いから連れすことができる。 美咲の狂気じみた独占から、母を救いすことができる。 そして、美咲自も――この、自分をすり減らし続けてきた介護の呪縛から、解放されるはずだ。
「……きます」
私は備え付けのボールペンを握りしめ、所と母の氏名、そして申請者欄に自分の名を、震えるでき込んだ。
「費用は、すべて私が京から支払います。
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自費負担分も、続きに必なものも、私が全額します。だから……母を、あの密から助けてください」
「わかりました」 佐伯さんは力く頷き、類を受け取った。
「すぐに調査の続きに入ります。千佳さん、お辛かったですね。でも、あなたが来てくださらなければ、このお宅は本当に遅れになるところでした」
遅れ。 その言葉のみに、背筋が粟った。
役所をた、空は抜けるようなれだった。 たいが頬を叩く。 バッグのには、申請の控えと、域包括支援センターの緊急連絡先が入っている。
これで終わる。 母にこの控えを見せて、「もう丈夫だよ、プロのが助けてくれるから、お姉ちゃんの顔を窺わなくてもいいんだよ」と伝えてあげよう。 母も、きっと堵してくれるはずだ。 の嘘も、監も、今で全部終わりにできる。
私はに坂を登り、実へと戻った。
*
ガラガラ、と玄関の引き戸をける。 のは、静まり返っていた。
「お母さん?」
靴を脱ぎ、居へ向かう。 こたつには誰もいなかった。 台所を覗くと、母がさな背を丸め、やかんでお湯を沸かしていた。 古びた湯呑みがつ、お盆のに並べられている。
「……千佳?」
母が振り返った。 その顔には、朝の恐怖のは消え、どこかホッとしたような、々しい笑みが浮かんでいた。
「よかった……まだ、いてくれたんだね。
美咲のメモを見て、もう京へっちゃったのかとって……」
「ってないよ。お母さんを置いて、帰れるわけないでしょう」
私は母の細い肩を抱き、居のこたつへと連れてった。 やかんの湯が沸き、母がおぼつかないつきでお茶を淹れようとするのを制し、私が急須を受け取って湯呑みに注いだ。 ちる湯気のに、番茶のばしい匂いが広がる。
「お母さん、座って。切な話があるの」
私はバッグから、先ほど役所で受け取ってきた申請の控えを取りし、こたつ板のに広げた。
「これ、見て」
母は目を細め、老鏡もかけずにを覗き込んだ。 「これ……何だい? 役所の……?」
「介護保険の、介護認定の申請だよ」
私は母のを握り、できる限り優しく、噛み碎くように語りかけた。
「私ね、さっき役所の域包括支援センターにってきたの。佐伯さんっていう専のと話してきた。お母さんの体、もう限界でしょう? 膝も痛むし、で買い物にもけない。美咲ちゃんに全部背負わせて、お母さんも毎怯えて暮らすのは、もう終わりにしていいの」
母の表が、ピクリと張った。 握っていた母のが、かすかにたくなっていくのが分かった。
「来週、役所から調査ののお医者さんが来てくれることになったよ。認定がりれば、週に何回か、で迎えに来てくれて、きなお呂に入れてもらえて、リハビリもできるデイサービスに通えるの。