"完璧な夫に給料を突き返した朝" 第17話
由里の顔から、サッと血の気が引いていった。
「あのお、全部、私の預からしていたんですよ。亮介さんの料からは、円もていません。亮介さんはで『俺がしてやるよ』と気持ちよく約束し、に帰ってきて私に『頼む、どうにかしてくれ』と泣きついていただけです」
「朋美……! もうやめろ……頼むから、もうやめてくれ……!」
亮介が両でを抱え、掠れた声で叫んだ。 だが、私は止まらなかった。 分のを、分の屈辱を、今こので、すべてのに晒すのだ。
「亮介さんは、料を全額私に渡すことで、何をに入れていたといますか?」
私は由里と正を見渡した。
「『族にすべてを捧げる理の夫』という名声です。親戚からの賞賛です。そして何より……『おがないから諦める』という、最も惨めで苦しい決断から逃げる権利です」
言葉のつひとつが、刃となって亮介の背に突き刺さる。
「『今はおがないからせない』とお義母さんに断って嫌われる役目は、全部私。『お遣いを減らして』とをげる役目も私。健太に『特訓を諦めて』と残酷な宣告をする役目も、全部私。亮介さんは、綺麗なを着て、ピカピカのに乗って、で『うちは嫁が財布を握ってるからさ〜』と笑っていればよかった。……私を、自分の見栄の盾にしていたんです」
リビングは、を打ったように静まり返っていた。
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テレビの音も、音楽もない。 ただ、亮介の荒い呼吸と、義母の引き攣った息遣いだけが響いている。
義母は震えるでファイルをめくっていた。 そこにあるのは、精緻を極めた数字の塞。 言い逃れの余など、芥ほども残されていない。
「亮介……」
義母が、掠れた声で息子を呼んだ。
「あんた……本当に、お……ないの……?」
亮介は答えられなかった。 ただ、テーブルのに突っ伏し、肩を刻みに震わせていた。
「今の取り万円から、固定費と亮介さんのカード代を引いて残ったのは、万千円でした」
私は淡々と、最の審判をすように告げた。
「そこから、健太の特訓代万円と、お義母さんへの旅代万円を払った結果、現、佐藤の座残はマイナス万千円です。の朝、宅ローンの引き落としが実されれば、残でから催促状が届きます」
私は腕を組み、突っ伏している夫を見ろした。
「さあ、亮介さん。今からは、あなたがこのの財布を握っているのよ。ご親戚の皆さんも、お義母さんも、こうして揃っていらっしゃるわ。ここで、の主として、堂々と決定をしてください」
「朋美……っ、頼むよ……」
「誰を、切り捨てるの?」
私の徹な問いが、部の空気を切り裂いた。
「の宅ローンを払うために、お義母さんに振り込んだ万円を『返してくれ』って座する? それとも、健太の塾に話して『やっぱり特訓はキャンセルします、を返してください』って息子のみじめな顔を見る? それとも、あの駐に止まっているヴェルファイアを今すぐ古に売り払って、残債をチャラにする? ……それとも、そこに並んでいる万千円の特寿司の代を、お義姉さん夫婦に『割り勘にしてください』って頼み込む?」
「なっ……!?」
由里が子を引いてちがった。
「な、なんで私たちが寿司代を払わなきゃいけないのよ! 亮介がご馳してくれるって言ったから来たんじゃない!」
「そうですよ」
私は由里をややかに見据えた。
「亮介さんは、おがないのに見栄を張ってご馳しようとしたんです。払えないなら、べたが払うのが筋でしょう? おあたり万円になりますが、お支払いいただけますか?」
「ふ、ざけないでよ……! 何よこれ、騙し討ちじゃない! あんたたちの夫婦喧嘩に私たちを巻き込まないでよ!」
由里は顔を真っ赤にしてバッグを掴むと、夫の腕を引っ張った。
「帰るわよ、あなた! こんな気の悪い席、秒だっていられないわ!」
「お、おい、由里……母さんはどうするんだよ」
「らないわよ! 亮介と母さんで勝にやればいいでしょ!」
逃げるように玄関へと向かう。 かつて私のことを「気が利かない」「ケチな嫁」と嘲笑っていた義姉は、がないと分かった瞬、蜘蛛の子を散らすようにっていった。