"完璧な夫に給料を突き返した朝" 第13話
「……払ったぞ」
亮介はリビングのテーブルに、の振込受領証を枚、叩きつけるように置いた。 塾への万円。 義母の座への万円。
「払った。これで文句ないだろ」 「のローンの引き落とし、りないわよ」 「ってるよ!」
亮介が、叫ぶように声を荒らげた。 その瞳は血り、ギリギリと奥歯を噛み締めている。
「からさっき連絡があったよ! 『残がする見込みです』ってな! 、支にって、マイカーローンの引き落としをし待ってもらえないか相談してくるよ! ……恥ずかしかったよ! 窓の若い員に『奥様にはご相談されましたか?』なんて聞かれてさ! 俺が、俺がどれだけ惨めないをしたか、おにわかるか!?」
「わかるわよ」
私は即座に、鋭く切り返した。
「私が、毎わってきた屈辱よ。スーパーのレジで銭がりなくて商品をつ戻すの恥ずかしさ。健太の学用品の集袋に、千円札がりなくて所の両替にったの惨めさ。お義母さんに『今はし費がなりまして』とをげて、『息子の料をどこに消してるのよ!』と鳴られたの悔しさ」
私は亮介の胸元を、差し指でく突いた。
「あなたが今わったのは、その百万分のよ」
亮介は息を呑み、ずさりした。 言葉を返そうとしても、喉の奥からヒクヒクとけない空気の音が漏れるだけだった。
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「……母さんから、話があった」
亮介はソファにへたり込み、両で顔を覆った。
「万しか振り込まれてないのを見て、狂ったように鳴られたよ。『親をコケにするのもいい加減にしなさい!』『親戚ので、私に恥をかかせる気か!』『あんたの嫁は、体どれだけ欲なんだ!』って……」
亮介の指の隙から、ぽろぽろと涙がこぼれ落ちた。 の男が、実の母親からの叱責に怯えて泣いている。 醜悪で、滑稽で、れな姿だった。
「俺、言えなかったよ……『がない』なんて、言えなかった。『朋美が、計をやりくりしてて、今はどうしてもこれしかせないって言ってる』って……そう言っちゃったんだよ……」
リビングの空気が、ピシリと凍りついた。
私はゆっくりと、亮介のに歩み寄った。
「……何て言ったの?」 「だ、だって……!」
亮介は顔をげ、怯えたような、すがるような目で私を見た。
「本当のことを言ったら、俺が会社で世してないとか、料がりてないってわれるだろ!? 俺のメンツが潰れるんだよ! だから……『朋美が財布を握ってて、どうしても首を縦に振らないんだ』って言ったら、母さん……」
亮介は言葉を濁した。 だが、その先を言わなくても、私には全てがに取るようにわかった。
「お義母さん、何て言ったの?」 「……今週末、うちに来るって」 「へえ」 「親父の回忌の法事の打ちわせを兼ねて、姉さん夫婦も呼んで、みんなでうちで事会をしようって……。
そこで、『朋美さんの銭覚について、族で話しわなきゃいけない』って……」
私の乾いた唇から、クスリと笑いが漏れた。
親族会議。 男の嫁を呼びし、親戚同で囲い込み、「来損ないの嫁」「夫の稼ぎをいつぶす悪妻」として吊しげ、無理やりにでもをげさせてを吐きさせる、あの佐藤の伝統芸だ。
かつて、結婚して目のにも同じことがあった。 亮介が勝に親戚の借の保証になりそうになったのを私が必で止めた、義母は親戚同をこのに集め、私の両親の育て方にまでケチをつけて私を泣き崩れさせた。 あの、亮介は親戚たちの輪ので、スマートフォンをいじりながらヘラヘラと笑っていた。 「まあまあ母さん、朋美も反省してるからさ」と、まるで事のように仲裁するフリをしながら、すべてのを私に押し付けていた。
あの悪を、もう度再現する気なのだ。 自分ひとりで母親にち向かう度胸がないから、親戚という「数の暴力」を使い、私を贄にして、自分のメンツと財布の帳尻をわせようとしている。
「亮介さん」
私の声は、自分でも驚くほど静かで、澄み切っていた。
「あなたが呼んだの? それとも、お義母さんが勝に決めたの?」 「か、母さんが……でも、俺も止められなくてさ……。朋美、頼むよ。今週末だけでいいから、母さんと姉さんにをげてくれ。
『私のやりくりがでした、申し訳ありません』って言って、残りの万を何とか面してくれよ……! そうすれば、丸く収まるんだからさ!」