"完璧な夫に給料を突き返した朝" 第4話
よろしくね」
フライパンの豚肉が、焦げた匂いをて始めた。 私は慌ててをめ、菜箸で肉を裏返した。 臓が、嫌なリズムで鐘を打っている。
「……亮介さん。今、そんな余裕はないわ」
できる限り、を交えずに言った。 声が震えないよう、喉の奥を固く引き締めて。
亮介が、リビングから議そうな声をげた。
「え? なんで? 今、俺の取り万あっただろ? 先もきな費はなかったはずだし」 「健太の、期集特訓の費用があるの。万円。それに、先のあなたのカードの請求、万千円来てるのよ」 「カード?」
亮介が眉をの字にして、リビングからキッチンのカウンター越しにひょっこりと顔をした。
「ああ、あのしいシャフトか。あれは必経費だよ。来、支社とのコンペがあるって言ったじゃないか。具くらいちゃんとしたの揃えないと、会社のメンツに関わるだろ?」 「でも、事に相談してくれれば……」 「相談って、朋美。俺が自分で稼いだだよ?」
亮介の声には、りではなく、底からの呆れが含まれていた。
「俺は毎、万全額を君に渡してる。円も隠さずにね。世の旦を見てみなよ? 遣い万円でやりくりさせられて、昼飯もワンコインでしてる男がどれだけいるか。俺は君を信用してるから、全額預けてるんだ。そのから、夫の仕事に必な具代の万円くらい、気持ちよくしてくれたっていいじゃないか」
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「そういう問題じゃなくて、全体の予算が……」 「母さんの万円だってそうだよ」
亮介は私の言葉を遮り、諭すように両を広げた。
「実の母親が温泉にきたいって言ってるのを、はいそうですかってかせてやれない息子なんて、けないだろ? 親戚のもあるんだよ。『亮介のところは嫁がしっかりしてるから、親孝もい』って、母さんが自できるようにしてやりたいんだ。それが族ってもんだろ?」
私はフライパンのを止め、油で汚れた菜箸を置いた。 そして、エプロンのポケットから、さく折りたたんでいたを取りした。 今の収支予定表。 昼、喫茶で志保に見せるに、何度も何度も卓を叩いてき直した、絶望な数字の羅列。
「見て、亮介さん。これ、今の確定してる支払いの覧よ」
私はカウンターのにを広げた。
「ローンの万千円、の万、駐と保険で万千円、健太の通常の塾と諸費用で万千円、お義母さんへの通常の仕送り万円、あなたのカード代万千円。これで、もう万千円なの」
のの数字を、指先で叩く。
「残り万千円で、分の費と、費と、用品代を払えって言うの? 費だけで先は万千円かかってるのよ。そこに健太の特訓代万と、お義母さんの旅代万をしたら……今だけで、万千円の赤字なのよ」
亮介は、差しされたをじっと見つめた。 そして、ふっとさく息を漏らし、困ったようにを掻いた。
に触れようともしない。
「朋美さあ。そういう細かい数字を俺に突きつけるの、やめてくれないかな」 「……え?」 「俺、で働いて、数字とノルマに追われて疲れて帰ってきてるんだよ。でまで、そんな卓弾いたような愚痴を聞かされたくないんだよ」 「愚痴じゃないわ、現実なの!」 「だから!」
亮介が、しだけ声をめた。 それでも決して鳴らない。常に「正しい側」にいるの、理然としたトーン。
「それを何とかするのが、君の役目だろ? 俺はを稼いでくるプロ、君はそれを配分して庭を守るプロ。そうやって役割分担してるんじゃないか。りないなら、費を夫するとか、健太の特訓をに回すとか、やりようはあるだろ?」 「健太の特訓は、今受けないとの志望判定ににわないのよ! あの子、毎夜のまで勉してるのよ!?」 「じゃあ、なおさら君が面してやらなきゃ。母親だろ?」
亮介は私の肩をポンと軽く叩いた。 あまりにも軽やかな、悪の欠片もないつきだった。
「俺は君を信じてるよ、朋美。君はしっかり者だから、最はどうにかしてくれるってってる。だからこそ、財布を全部預けてるんだからさ。ね?」