"教室の最後列に座る元教員" 第18話
社にげて、タダ働きでいいから使ってくれって頼み込みました。朝から夕方まで、番汚ねえ油落としと、タイヤの積みろしをやらせてます」
「……、あかぎれだらけですね」
私のから漏れたのは、それだけだった。
「痛えいをしなきゃ、分からねえんですよ」
健君は缶コーヒーをすすり、く濁った息を吐きした。
「でどれだけ『の物を盗むな』って教えたって、世の痛みなんか分かりゃしねえ。あいつはな、に困ったら、どっかから引っ張ってくればいいとってたんだ。俺が貧乏で、母親がいなくて、惨めだから……自分にはしくらい悪いことをする権利があるって、の底で甘えてたんだよ」
健君の言葉は、淡々としていた。だが、その言言が、私の胸の奥くに突き刺さった。
「その甘えの根っこを叩き折ってやらなきゃ、あいつは本当に取り返しのつかないになっちまう。……俺と同じになっちまう」
「健君、あなたは……」
「俺は、、あんたをんできてきましたよ」
健君は、方の息子の背を見つめたまま、静かに言った。
「のあの、あんたに疑われて、学を辞めて……それからの毎は、獄でした。理尽な目に遭うたびに、ので柴田信子って名を呪った。『あのクソババアのせいで、俺のは狂ったんだ』ってな。
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そうやって誰かのせいにしていれば、自分が惨めな底辺にいる現実から目を背けられたからだ」
彼は自嘲気に、くを鳴らした。
「だけどな、悠がまれて、しずつ物がついて……ある、あいつが学で友達の消しゴムをポケットに入れて帰ってきたことがあった。俺はあいつを、ぬほど殴り倒しましたよ。あいつは泣き叫んで、『俺じゃない、落ちてたんだ』って嘘をついた。その顔を見た、俺はゾッとしたんです」
健君は空を仰いだ。の青空はどこまでもく、く広がっていた。
「あいつのその顔は、、準備であんたを睨みつけてた俺の顔と、瓜つだった」
私の臓が、たく締め付けられた。
「あの、俺はおを取ってなかった。無実だった。……けどな、柴田先。俺はあの、本当に胸を張れるだったかって言えば、そうじゃなかったんだよ」
健君の声が、わずかにくなった。
「学をサボって、タバコ吸って、の奴らとカツアゲまがいの喧嘩をして……『どうせ俺なんか』ってグレて、周りを威嚇して歩いてた。だから疑われたんだ。あんたのやり方は汚かったし、絶対に許せねえとってたけど……疑われるだけの隙を垂れ流して、世を舐め腐ってたのは、違いなくあの頃の俺自だったんだよ」
私は握りしめたほうじ茶の缶を見つめた。
缶の底に溜まった温もりが、私の震える両に痛いほど染み込んでいた。
『あなたの頃のいが、疑いを招いたのも事実なのよ』
、私が保のために彼に投げつけた、あの卑劣な言葉。
私はそれを、自分の罪をめるための具として使った。
だが、健君はの歳ので、その理尽な傷跡を自らので抉り、血を流しながら、親としての血肉へと昇華させていたのだ。
「あのの夜」
健君は線を落とし、面のを見つめた。
「徒指導で、あんたが『魔女狩りだ』『偏見だ』って叫んでるのを見た、俺は背筋が寒くなったよ」
「……」
「あんたは昔の罪を償うために、悠を『な、の犠牲になった被害者』に仕てげようとしてた。もし俺があの、あんたの言葉に乗っかって、『そうだ、学が悪い、うちの息子を疑うな』って騒ぎててたら……悠はどうなってたといます?」
健君は私を振り返った。
その瞳には、かつて理科準備にいた良のはどこにもなかった。の子供の命を背負い、のからちがってきた父親の、厳格で、い差しだけがあった。
「あいつは、『親父の昔の担任が揉み消してくれた』ってを占めて、次はもっとでかい犯罪にを染めてたはずだ。『俺は悪くない、世が悪いんだ』って言い訳を握りしめて、俺と同じように、誰かを呪いながらきるになってたはずだ」
喉の奥が引きちぎれるように痛かった。