"教室の最後列に座る元教員" 第13話
「そ、それは……」
「逃する姿を目撃したとおっしゃいましたね。午過ぎ、激しいのる暗ので、裏から逃げる自転の物の顔を、あなたは本当に『悠である』と百パーセント断定できるだけの距と照のもとで認したのですか? 羽のフードを被っていたら? 同じの制を着た別の徒だったら? 暗がりのの数秒の目撃証言など、警察の捜査現でもっとも信憑性のい証拠のつです!」
「柴田先、しかしですね……」
教がおろおろとを挟もうとしたが、私はそれをで制した。
度回り始めた私の舌は、誰にも止められなかった。
私は健君を横目で見た。彼は相変わらずを垂れたまま、微だにしていなかった。
その痛々しい背が、私の胸を激しく突きかしていた。
(見ていて、健君。今度こそ、私があなたたちの方になる。度と、学の勝な理屈であなたたちを泣かせたりはしない)
私は胸を張り、藤教諭に詰め寄った。
「壊された子顕微鏡の周囲から、悠君の指紋は検されたのですか? 盗まれた万千円の種は? 悠君の所持品や自転の荷台から、その現は見つかったのですか? ……まだ何も見つかっていないのでしょう!?」
藤教諭が言葉に詰まり、忌々しそうに顔を歪めた。
「そ……それは、今からあいつの自宅を宅捜索させれば……」
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「確たる物証もないまま、徒の自宅を宅捜索させるおつもりですか!?」
私は声を張りげた。指導の蛍灯が細かく震えるような気がした。
「頃の素が悪いから。遅刻がいから。喧嘩っいから。……そんな偏見だけで、状況証拠を無理やり繋ぎわせての子供を犯罪者に仕てげるのが、今のの教育指導なのですか!? あなた方がやっていることは、教育ではない! ただの魔女狩りです!」
息が切れ、胸が激しくした。
部のが、を打ったように静まり返った。
藤教諭は顔を真っ赤にして拳を握りしめ、教は蒼になって線を泳がせていた。
勝った、とった。
論理の性、制度の盲点、教育配慮という名の錦の御旗。私は現役代に培ったすべての武器を使い、学側の拙速な断罪を完膚なきまでに叩き潰したのだ。
これで、悠君は守られる。
警察も、退職教員のな介入と状況証拠の脆さをにすれば、逮捕や補導を躊躇せざるを得ないはずだ。
私はくなった額の汗を拭い、沈黙を守り続けている健君の隣へと歩み寄った。
「さん」
私はかつてないほど優しく、包み込むような声音で語りかけた。
「してください。私がいる限り、学側の勝な決めつけで悠君を処分させるような真似は絶対にさせません。
警察にも、私から事を説します。……、私があなたにしてしまった過ちを、悠君に絶対に繰り返させはしませんから」
その瞬だった。
ドンッッッ!!!!
指導全体を揺るがすような、凄まじい衝撃音が轟いた。
私ののすぐ横で、机の板が鳴をげた。パイプの皿がねがり、めた茶の入ったコップが倒れて、机のに茶いたまりを作った。
「ひっ……!」
教がい鳴をげてび退いた。
私は呆然として、目のの景を見つめた。
健の巨な拳が、机の分い板にめり込まんばかりに叩きつけられていた。
拳の皮膚が裂け、節くれだった骨の隙から、赤い血がじわりと滲みしていた。
健君の肩が、激しく波打っていた。
滴り落ちると汗にまみれた首筋の血管が、青黒く浮きがっている。
彼はゆっくりと、血の滲む拳を持ちげた。
そして、信じられないほどく、底から響くような怨嗟の声を絞りした。
「……黙れよ」
私は息を呑んだ。
「健……君?」
「黙れって言ってんだよ、偽善者がぁッ!!」
健君が顔をねげた。
その瞳を見た瞬、私の全の血が逆流した。
りではなかった。憎しみでもなかった。
そこにあったのは、見ているこちらの胸が張り裂けそうになるほどの、絶望な『羞恥』と『拒絶』だった。
彼の目は真っ赤に充血し、目からは涙が溢れしていた。
唇が激しく震え、噛み締めた奥歯の隙から血の泡が混じっていた。