"教室の最後列に座る元教員" 第12話
の、しかも部者の元教員が徒指導のに乗り込むなんて、代未聞です。教にどんな顔をされるか……」
「代未聞で結構です」
私の声は、くをうようにかった。
「徒のが、今夜この所でへし折られようとしているのよ。教の嫌や教育委員会の体面なんて、どうでもいいわ」
私は松教諭を押し通るようにして、リノリウムの敷かれた階段を気に駆けがった。
濡れたスラックスが太ももにたく張り付く。歳の老いた臓が、破裂しそうな勢いで肋骨を叩いていた。
の理科準備。
あの暗い薬品の匂い。
『どうせ俺のことなんか、最初から疑ってたんだろ』
あの、私が握り潰したの未来が、階段の段段を踏み締めるたびに、のように私の首に絡みついてくる覚があった。
度目だ。
学という閉じた箱庭ので、が寄ってたかって「おがやったに決まっている」という線をに浴びせ、逃げを塞ごうとしている。
父親があれほどにまみれ、油に汚れながら育ててきた子供を、またしても同じで『良』の檻に閉じ込めようとしているのだ。
(私が止める。今度こそ、私がこの子を守る)
それは正義などという易しいものではなかった。余、私の魂を焼き続けてきた悔の炎が、盲目な病となって私の考を支配していた。
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階の奥、黄いが漏れる『徒指導』の擦りガラスのドアのにつと、から気を孕んだ男の鳴り声が聞こえてきた。
「――だから言ってるだろうが! ライターが落ちてたんだ! あいつの名入りのジッポが現のに転がってて、あいつが裏からチャリで逃げるのを俺がこの目で見たんだよ! これ以の証拠がどこにある!」
藤教諭の声だった。
私はドアの取っにをかけ、ノックもせずに勢いよく横に引きけた。
ガラガラという障りない音が響き、内の空気が瞬で凍りついた。
部の央にある机を挟んで、の男がっていた。
腕を組み、額に青筋を浮かべているの柄な男が徒指導主任の藤教諭。その隣で、困惑したように鏡のブリッジを押しげているのが教だった。
そして、机の反対側に、濡れた作業着のまま直していたのが――健だった。
彼は首からタオルをぶらげ、のついた全靴のまま、油との匂いを全からちらせていた。をく垂れ、両はズボンの脇に固く握りしめられている。その拳は、く骨が浮きるほどく握り込まれ、微かに震えていた。
私の乱入に、藤教諭が目を剥いて振り返った。
「な……誰だ、あんたは! 今、な指導だぞ! 部者はていけ!」
「藤先、落ち着きなさい」
私は歩、部のに踏み込んだ。
びしょ濡れの髪からの雫がに落ちたが、私は線を逸らさず、まっすぐに教の顔を見据えた。
「教先。突然の無礼をお許しください。元第学教諭、元教育相談員の柴田信子です」
教の目が驚愕に見かれた。
「柴田……先? どうしてここに……」
「松先から連絡を受けました。本の徒指導において、な事実誤認と冤罪の危険がじていると聞き、元教育者として見過ごすことができず駆けつけました」
「事実誤認だと!?」
藤教諭が机を激しく叩いた。
「退職した寄りが何を偉そうに! 現も見てもいないくせに、ったようなを利くな! 理科準備の窓ガラスが割られ、文化祭の準備万千円が盗まれ、子顕微鏡が台も叩き壊されたんだぞ! 警察の鑑識も入ってるんだ!」
「その現に、本当に悠君が侵入したというかぬ証拠があるのですか」
私の声は、の教職で培った徹な響きを帯びていた。
藤教諭を睨み据え、私はて続けに言葉を浴びせた。
「現に残されていたというライター。先、あなたが度没収し、返却したばかりのものだと聞きました。男子ので、ライターの貸し借りや譲渡が常茶飯事であることくらい、あなたも徒指導を担当しているならごのはずです。
誰かが彼から奪った、あるいは拾ったものを現に落とした能性は検証されたのですか?」