"教室の最後列に座る元教員" 第8話
表に突ったれてちゃ、所迷惑だ」
プレハブのは、休憩所兼事務所になっているようだった。
スチール製の机のには伝票と皿が乱雑に置かれ、部全体にえたタバコの煙と湿気た雑誌の匂いが充満していた。壁には油圧器のポスターと、焼けしたカレンダーが歪んで貼られている。
健君はパイプ子をつ、で無造作に引きして私のに置いた。自分は腰掛けず、流し台の蛇を捻って、業用のピンクの鹸でを洗い始めた。
蛇から勢いよくるが、シンクの底に溜まった赤錆を弾く。
ジャリジャリと砂を噛むような音をてての油をこすり落としながら、彼は背を向けたまま言った。
「話って何です。菓子折り持って元教え子の仕事に乗り込んでくる暇があるなら、悠の学にでも寄付したらどうですか」
容赦のない棘だった。
私は差しされたパイプ子に座ることもできず、ったまま、握り締めた菓子の袋を見つめた。
「のことです」
私の声は、プレハブのいトタン壁に吸い込まれるように頼りなかった。
「あの……理科準備で、私はあなたに『先の勘違いだった』としか言いませんでした。それどころか、頃のいが悪かったと、あなたを責めるようなことまでにしました。
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……私が違っていたの。自分の保のために、あなたにすべての責任を押し付けました。本当に、申し訳ありませんでした」
私はくをげた。
腰を度に折り、のビニールシートの点を見つめた。臓が元で激しく鐘を打っていた。
沈黙が流れた。
聞こえるのは、蛇から落ちるポタポタという滴の音と、換気扇のカタカタという異音だけだった。
やがて、健君が乾いたタオルで乱暴にを拭く気配がした。
「……顔、げてくださいよ」
え切った声だった。
私はゆっくりとをげた。健君は流し台に背を預け、腕を組んで私を見ろしていた。
鹸でいくら擦っても落ちない黒い油染みが、彼の爪の隙や指の節くれにく刻み込まれている。
「謝って、どうするつもりですか?」
「え……」
「あんたが今さらげて、俺に『許します』って言わせたいんですか? そうすりゃ、あんたのその派な教員活が、綺麗サッパリ無傷で終わるからですか?」
「そんなつもりじゃ……!」
「じゃあ何なんだよ!」
初めて、彼の声のトーンがねがった。
声ではなかった。しかし、の底に押し込められていた分のい汚が、気にから吹きしたような気迫だった。
「俺はな、あんたのその顔が番虫酸がるんだよ。いつでも自分が正しくて、いつでも子供のためにを痛めてる『いい先』の顔だ」
健君は歩、私に詰め寄った。油の匂いと、い体臭が私の先を覆う。
「ってますか? 俺があの、どうやってきてきたか」
私は唇を震わせ、言葉を失った。
「で学辞めて、最初は解体の現に入った。卒のガキなんざ誰も扱いしねえよ。殴られるのは当たり、料はピンハネ、寝る所は飯だ。しでも文句言やあ、『これだから学ドロップアウトした良は』で終わりだ」
彼は自分の太い腕を捲りげた。そこには、ガラスか鉄板で切ったような古いく盛りがった傷跡が、何本もっていた。
「歳で悠の母親と緒になった。けどな、貧乏に耐えられなくなって、あいつは悠が歳のに男作っててったよ。俺にはもねえ、学歴もねえ、胸張って言える肩なんか何つねえ。ただ、こので鉄屑運んで、トラックのに潜って、すするみたいにして悠を育ててきたんだ」
「健君……」
「あんたが毎毎、保護者会のろに座り始めた、俺がどうったか分かりますか?」
健君は歪んだ笑みを元に浮かべた。その瞳の奥にあるたいに、私の背筋が凍りついた。
「学の最初の、体育館の隅にあんたの顔を見つけた、俺は吐き気がしたよ。壇に駆けがって、マイク奪って、全員のであんたを殴り倒してやろうかとった。
俺のを叩き壊した偽善者が、何わぬ顔でまた学に入り込んでるってな」