"教室の最後列に座る元教員" 第7話
勤続の表彰状、文部科学臣からの謝状、そして歴代の卒業たちと撮った褪せた記写真。
教育者として恥じないを送ってきた証だと、かつては誇らしく眺めていたそれらの切れが、今は私を嘲笑う屑にしか見えなかった。
私は彼を見守っていたのではなかった。
彼が盗みもせず、警察の厄介にもならず、真面目な父親としてきている姿をろから盗み見ることで、「私のせいでこの子のが狂ったわけではなかった」と、自分自をさせたかっただけなのだ。
私はあの席で、健君を見ていたのではない。
「徒を信じられなかった過の罪」から逃げ回り、歳になってもなお保にしがみつく、醜い自分自の姿を映ししていたに過ぎなかった。
(……逃げてはいけない)
胸の奥が焼けるようにかった。
もしに止められたからと、健君に煙たがられたからと、このまま度と関わらずに引きがれば、私はぬまで「都のいい言い訳」を抱えてきることになる。
あの、理科準備で彼に浴びせた「あなたの頃のいが悪かった」という言葉を、度と取り消せないまま墓に入ることになる。
曜の朝、私はクローゼットからもっともな鼠のスラックスと黒のウインドブレーカーを取りした。
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駅の老舗菓子に寄り、季節の羊羹が本入った化粧箱を買い求めた。熨斗は断った。そんな形式ばった礼儀など、今の彼にとっては侮辱にしかならないと分かっていたが、ぶらで向かう度胸すら、私には残っていなかった。
健君が勤めている自備は、をきくれた国沿いの業団にあった。
を乗り継ぎ、に本しかない線バスに揺られて分。
窓の景は、奇麗な宅から、プレハブの倉庫や産廃業者の資材置き、古びた鉄所が並ぶ埃っぽい景へと移り変わっていった。アスファルトの照り返しが、まだだというのに初のように苦しい。
終点のバスでり、型トラックが激しい圧とともに砂埃を巻きげていく国を、私は提げ袋を握りしめて歩いた。
の角に、赤錆びたトタン根の平建てのが見えてきた。
『自業』という板はすっかりペンキが剥がれ落ち、辛うじて『……自……』の文字だけが読み取れる。敷内には、タイヤをされた型ダンプや、事故らしき軽トラックが無造作に転がされていた。
油と排気ガス、そして溶接のが焦げ付いた独特の匂いが、をついた。
私が敷の入りでち往していると、ドラム缶の脇でタバコを吸っていた若い髪の員が、怪訝そうに目を細めてこちらを見た。
「おばあちゃん、何か用? ここは修理のだよ。迷子?」
「あ……いえ。あの、健さんはいらっしゃいますでしょうか」
私の掠れた声に、員はタバコをもみ消し、の奥に向かって声で鳴った。
「健さん! お客さん! なんか綺麗なおばあちゃんが訪ねてきたぞ!」
の暗いピットから、鈍い属音が響いた。
ガシャン、といレンチが鉄板のに落ちる音。続いて、コンクリートのを擦るい音がづいてきた。
現れたのは、あのと同じ、紺の作業着を着た健君だった。
には汚れたタオルを巻き、顔の半分には黒いグリースが筋状にこびりついている。作業着の胸元は汗で濡れ、い胸板が荒くしていた。
彼は私を目見るなり、ピタリとを止めた。
その目に浮かんだのは、りではなかった。
「……何しに来たんですか」
底からうんざりした、い溜息混じりの声だった。
「健君。突然押しかけて、本当にごめんなさい。でも……」
私は提げ袋を両で胸のに差しした。
「お話ししたいの。きちんと、あなたに謝りたくて」
若い員が面そうにこちらを覗き込もうとしたが、健君は鋭いでそれを制した。
「おい、トモ。番ピットのクラッチ板、先にバラしとけ」
「え? あ、はい……」
員がりにの奥へ消えていくのを見届けてから、健君は脇の錆びたプレハブを指差した。
「に入れ。