"教室の最後列に座る元教員" 第3話
はしばらく黙っていたが、やがてく息を吐きすと、バインダーを脇に抱え直した。
「……事はお察しします。ですが、ルールはルールです。次回以はお引き取り願うことになりますので、ご承おきください」
それだけ言い残すと、は踵を返し、昇の奥へと消えていった。
残された私は、い取りでをた。
学のにた途端、張り詰めていた糸が切れ、両から力が抜けていくのをじた。
宅へと続く緩やかなり坂の途で、私は垣にをついてち止まり、激しく波打つ胸を落ち着かせようとした。
(壊した。ええ、私が壊したのよ)
目を閉じれば、あのの職員の景が、昨のことのように鮮に蘇ってくる。
平成。初。
当の私は歳。第学での学主任を務め、文部科学省の指定研究としての指導案作成にけ暮れていた。
自分は徒を公平に見ている。どんな問題児にも教育なを持って接している。
そう信じて疑わなかった。傲な、あまりにも傲な教育者だった。
健は、そのの私の担任クラスの徒だった。
入学当初から問題のいだった。母親は夜ので働いており、庭環境は荒れていた。着古して袖の擦り切れた制、タバコの煙の匂いが染み付いた髪、汚れ、踵を踏み潰した履き。
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授業の遅刻は常茶飯事で、の良グループと喧嘩をしては、顔に青あざを作って登してきた。
「、また遅刻か。ホームルームが終わってから来てもがないぞ」
「……別に、頼んで来てもらってねえよ」
彼はいつも貞腐れたように線を逸らし、乱暴に机に鞄を放り投げていた。
当の私は、彼をどうにかして『更』させようと躍起になっていた。放課に残してテストを受けさせ、活態度の乱れを厳しく叱責した。それが教師の責任であり、彼のためになると信じていたのだ。
だが、彼は私の言葉をすべて、頑なな沈黙でね返した。
事件が起きたのは、の蒸し暑い曜だった。
体育祭の準備費用として、徒たちから集めた学級費、現万千円が入った茶封筒が、私の机の引きしから消えたのだ。
職員の鍵はかかっていなかった。目の体育の授業、全徒がグラウンドにていた帯だった。
だが、だけ、見学者として舎に残っていた徒がいた。
健だった。
彼はの喧嘩でを痛めたと言い、体操着に着替えることもせず、教に残るよう指示されていたのだ。
職員に駆け込んできた別の教員が、「体育館の裏でが何かを買っていたのを見た徒がいる」と証言した。それが駄菓子のジュース本だったとしても、当の私ののでは、すべてのピースが恐ろしい精度で噛みってしまった。
私は彼を、放課の無の相談に呼んだ。
さなパイプ子に座らされた歳の健は、私を睨みつけていた。
「君。正直に言いなさい。先はっているんじゃないの。今ならまだ、やり直せるから」
私は努めて穏やかな、しかし逃げを塞ぐような声で言った。教師が子供を追い詰めるに使う、もっとも卑劣で、もっとも親切を装ったトーンだった。
「何のことだよ」
「職員にあった茶封筒よ。万千円。みんなが汗を流して集めたおよ。あなたがで舎にいたに、なくなっているの」
「らねえよ! 俺は教で寝てただけだ!」
「じゃあ、の怪はどうなの? 昨の夜、繁華にいたって補導員から連絡が入っているわ。嘘をつくのはやめなさい。あなたのためにならない」
「俺じゃねえって言ってんだろ!」
健はちがり、パイプ子を蹴り倒した。その瞳には、侮蔑と、そして助けを求めるような絶望が混ざりっていた。
だが、当の私には、それが『図を突かれた非の逆』にしか見えなかった。
「座りなさい!」
私は教壇仕込みの鋭い声で彼を圧迫した。
「あなたが頃からどんな態度で学活を送っているか、胸にを当てて考えなさい。遅刻を繰り返し、を殴り、嘘をつく。そんなあなたの言葉を、誰が信じられるとうの? 信用というのはね、々の積みねなのよ。