みかん小説
本棚

"愛人の妊娠を信じた夫と15年前の無精子症診断書" 第16話

健は私を指差した。

「俺の精子には何の問題もなかった。おは子供を産めない女。女なんだよ」

そのから、私の獄のような贖罪の々が始まった。

健に対しては、欠陥品である私を捨てないでくれたという負い目をじた。

彼の理尽な求にも、全て従うようになった。

義母からは跡取りも産めない役たずと毎のように罵られた。

私はその度にトイレに隠れて声を殺して泣いていた。

ナナに対しても、実の子供を産めない罪悪から、何でも言うことを聞く都の良い母親を演じ続けてしまったのだ。

私は震えるで、その古びた茶い封筒をけた。

に入っていたのは、12の付が記された『精液検査報告』だった。

私は息をんだ。

そこに印字された検査結果の数値を、信じられないいで見つめた。

精子濃度、運率、正常形態率。

その全ての項目が0を示していた。

総所見の欄には『絶対無精子症』という酷な文字がはっきりと記されていた。

子供ができなかった原因は私ではなかったのだ。

健は自分が完全な妊症であるという致命な事実を隠蔽するために、全ての責任を私に押し付けた。

そして私を子供を産めない女として精神に支配し、15も奴隷のように扱い続けてきたのだ。

あまりの残酷さと勝さに、私は声をげて笑いしそうになるのを必で堪えた。

広告

涙は滴もなかった。

ただ自分のにあったわずかなけすらも、この瞬に完全に消えったのだ。

同に私の脳裏に、恐ろしいつの事実がのように閃いた。

健が絶対無精子症であるならば、20歳のである美の妊娠は100%健の子供ではない。

健は自分の若さと男としてのプライドを信じたいがために、美の「あなたの子よ」という嘘を疑いもせずに信じ込んでいるのだ。

なんという滑稽でれな男だろうか。

そしてもうつ。

健が若い頃から無精子症だったのだとすれば。

現22歳になる娘のナナも、健と血の繋がった実の娘ではないということになる。

健の妻は、別の男の子供を妊娠し、それを健の子供だと偽って産んだのだ。

そして嘘がバレるのを恐れたか、あるいは本当の父親の元へくために、幼いナナを置いてをていったのだろう。

健は自分を裏切った女が残したの子供を、実の娘だと信じ込んで溺した。

そして私に押し付けていたのだ。

15の族ごっこは、最初から最まで全てが醜い嘘で塗り固められていた。

私はその検査報告をスマートフォンで丁寧に撮した。

証拠フォルダの最もな所に保した。

翌朝。

リビングのダイニングテーブルには、昨夜健が乱暴に投げ捨てた緑の、婚届がそのまま置かれていた。

いつも通りに朝の準備を終えた私に対して、スーツ姿の健は酷な命令をした。

「さっさと側にハンコを押して、今に役所へしてこい」

健は偉そうに顎をげた。

「俺は今から2泊3で張だから、帰って来るまでにおの荷物を全てまとめて、このからてけよ」

健の傍らでは、ナナがスマートフォンをいじりながら笑を浮かべている。

「やっとせいせいするね」

ナナは画面から目をさずに言った。

「貧乏臭いママごっこは今でおしまいだよ」

ナナは健に甘えるように言った。

「パパ、張から帰ってきたら、みかちゃんと3でしいマンションの契約にこうね」

ナナのその無邪気で残酷な言葉に、健は満げに頷いた。

「ああ、そうだな。俺たちのしい族のスタートだ」

私はテーブルのの婚届をに取った。

静かに、そしてくをげた。

「わかりました。今に必ず役所へ提してまいります」

私は顔をげた。

「15、本当にお世話になりました」

私の従順な態度を見て、健とナナは勝利を確信したようにで笑った。

彼らは私が全てを失って泣き寝入りしながら、惨めにこのをていくとい込んでいる。

私は自分の鞄に婚届をしまい、彼らよりも先にをた。

向かった先はもちろん役所ではない。

弁護士の待つ、あの静かな法律事務所だった。

広告

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: