"「この子は俺の子じゃない」" 第5話
汗を吸って所々が黒ずみ、縁のマジックテープがみじめに剥がれかけたその塊は、まるで解体された来損ないの肉塊のように鎮座していた。
そしてもうつは、助産師が「確認のために」と持ってきた、葵の母子健康帳だった。 表には、見慣れた妹の丸っこい文字で『梨葵』とかれている。
私の母は、その帳から度も線をさずにいた。 両を膝ので固く握りしめ、刻みに震えている。その指の関節は、血の気が引いてく浮きがっていた。
「……説してちょうだい」
最初にをいたのは、義母だった。 その声はく、押し殺されていたが、刃物のような鋭利な震えを帯びていた。
「紗枝さん。健太。そこに座って……最初から、言も漏らさずに話しなさい。私たちは、このカ……いったい何を祝わされていたの?」
義父は腕を組み、仁王ちのまま壁を背にしていた。を文字に結び、義母の言葉にすら頷かない。その沈黙が、号よりも遥かにく私の胃を締めげる。
私は乱れたカーディガンの胸元をかきわせ、喉の奥にへばりついた唾をみ込んだ。 声をそうとすると、喉が引き裂かれそうに痛む。
「お義母さん……違うんです。騙すつもりなんて、なかったんです」
「騙すつもりがない?!」 義母がバン、とのひらでテーブルを叩いた。 パイプ子の脚がを擦り、障りな甲い音をてる。
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「じゃあ何なの、その腹は! その気持ちの悪いゴムの塊は何なのよ! 毎実に来るたびに、そうにお腹をさすって……『つわりが酷いんです』『男の子みたいです』って……全部、全部お芝居だったって言うの?!」
「違います! 芝居じゃない……ううん、お芝居でしたけど、悪があったわけじゃないんです!」
私は必にを乗りした。 テーブルののシリコンにが触れそうになり、反射に指を引っ込める。その忌まわしい触が、自分の犯した罪のさを肌から突き刺してくるようだった。
「葵のためだったんです!」 私は母の顔を見た。 「お母さん、葵のこと、ってるでしょ?! あの子、のに男に逃げられたの! 同棲してた男に! 妊娠が分かった途端にLINEも話もブロックされて、アパートの賃も滞納して……あの子、おもなくて、仕事もクビになって、私のに泣きついてきたのよ!」
母がピクリと肩を揺らした。 だが、顔はげない。
「病院にったには、もう週を過ぎてたの」 私はで言葉をねた。言い訳を並べてなければ、自分がこの部の気に押し潰されてしまいそうだったからだ。 「絶するにも、体の負担がきすぎる期だった。それに……葵にはおがなかった。術費用どころか、の活費さえなかったのよ! あの子、実には絶対に言えないって泣き崩れて……もしお母さんたちにられたら、親戚に言いふらされて、元にいられなくなるって……!」
「だからって……!」 母がようやく顔をげた。 その目は真っ赤に充血し、涙でぐしゃぐしゃに濡れていた。 「だからって、なんであんたが妊娠したふりをする必があるのよ?! 葵が過ちを犯したなら、私に相談しなさいよ! なんであんたたちが、こんなそれた嘘を……!」
「相談したらどうなったの?!」 私は叫んでいた。 自分でも驚くほど、攻撃な声がた。 「お母さんは絶対に葵を責めたはずよ! 『みっともない』『所に顔向けできない』って、葵を追い詰めたに決まってる! あの子、あの本当ににそうな顔をしてたのよ! 私たちが助けるしかなかったの!」
部のが、瞬の静寂に包まれた。
私は呼吸を乱しながら、義理の両親を見つめた。 今度は同を買うように、声のトーンを落とし、懇願するように両を組んだ。
「お義父さん、お義母さん……聞いてください。葵は最初、産んだら乳児院に預けるつもりでした。でも、そんなのあんまりじゃないですか。私たちの血を分けた妹の子供が、顔もらない施設で育つなんて……。だから、私が健太に提案したんです。私たちが、この子を引き取ろうって」
私は自分の平らな胸をく押さえた。
「私たちは、子供ができませんでした。何百万もかけて治療して、それでも授からなかった。でも、葵の子供なら……私の甥です。私たちの血が半分入っている。