"祖母は十二年年賀状を書いてない" 第10話
息が止まりそうだった。
「そのの暮れ、私はもう、お義母さんの顔を見るのも怖かった。でもね、を過ぎた頃、ふと気づいたのよ。……ああ、今は賀状をどうするんだろう、って」
叔母さんは顔をげた。 その目には、涙は浮かんでいなかった。 ただ、狂気にも似た、追い詰められたの徹なだけがあった。
「お義母さんは私を拒絶してるから、賀状どころじゃない。でも、もし元旦に、京や横浜に賀状が届かなかったらどうなるとう?」
叔母さんの問いに、私は何も答えられなかった。
「男さんや、あなたのお母さんは、どうしたとう?」
「……話を、かけてくる?」
「そうよ」 叔母さんは嘲笑するようにを鳴らした。
「話をかけてくるのよ。『淳子さん、今賀状が届かないけど、母さんどうしたの?』『ちゃんと面倒見てくれてるの?』ってね。……そして、もし母さんの認症や暴言のことを正直に話したら、あのたち、なんて言ったとう?」
叔母さんは歩、私に詰め寄った。 その迫力に、私はわずずさりそうになった。
「『あんなにしっかりしてた母さんが、そんなこと言うはずがない』『淳子さんの接し方が悪いんじゃないか』『母さんにストレスを与えてるんじゃないか』……絶対に、そうやって私を責めたはずよ! あのたちは、自分たちが全な京にいて、親孝な子供のポジションにいたいだけなんだから!」
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胸の奥を、太い針で突きされたような衝撃があった。 反論できなかった。 母なら、絶対にそう言ったはずだ。 『お母さんがそんなこと言うわけないでしょ、淳子さんがイライラして当たってるからじゃないの?』と、話で偉そうに説教したはずなのだ。
「そしてね、お義母さんも同じよ」 叔母さんの声が、さらにく、くなった。
「もし男さんたちから『賀状が届かないけど丈夫か』って話があったら、お義母さんは絶対にこう言ったはずだわ。『淳子が悪して、賀状のも買ってくれないんだ』ってね。……あのは、子供たちのでは絶対に『けなくなった惨めな自分』を認めない。全部、私のせいにするに決まってたのよ!」
叔母さんの両肩が激しくしていた。 作業のえ切った空気が、叔母さんの吐きすい息でく濁る。
「だから……だから私は、買ったのよ」
叔母さんは、自分のを抱えるようにして呟いた。
「郵便局にって、で賀状を買って、自分の机でいたのよ。お義母さんに相談なんてできるわけないじゃない! 『元気にしています、トマトがたくさん採れました、配いらない』……あのお決まりのを、何枚も、何枚も、で泣きながらいたのよ!」
「叔母さん……」
「騙すためじゃない!」
叔母さんの叫びが、トタン根を震わせた。
「私を守るためよ! あの葉さえ届いていれば、あなたたちは満して、崎に来ない! 『今も母さんは元気だ』ってい込んで、余計なしをしてこない! あの葉はね、あなたたちをさせるためのものじゃない……私とあなたたちのに引いた、防波堤だったのよ!」
その言葉が、私の全を撃ち抜いた。
防波堤。 私たちが毎元旦に受け取り、「ああ、おばあちゃんは今も元気だ、よかった」と胸を撫でろしていたあの葉は。 私たち族の絆の象徴などではなく。 介護を押し付けられ、暴言を浴びせられ、孤無援ので精神をすり減らしていたの女性が、都の無責任な親戚たちをざけるために張り巡らせた、刺鉄線だったのだ。
「……おばあちゃんは」 私は震える声で、ようやくそれだけを絞りした。
「おばあちゃんは本当に、、度も気づいてなかったの? 毎正、親戚から『賀状ありがとう』って話がかかってきてたのに……?」
淳子叔母さんは、力なく腕をろした。 そして、のついた靴の先を見つめながら、静かに、残酷な事実をにした。
「気づいてないわけ、ないでしょう」
「……え?」
「あのはね、茜ちゃん。はし衰えても、プライドの保ち方だけは誰よりもけてるよ」
叔母さんの瞳から、すっとが消えた。
「正に話がかかってきて、『今も達な賀状をありがとう』って言われた……お義母さんは、自分が枚もいてないことなんて、百も承だったはずよ。