"祖母は十二年年賀状を書いてない" 第9話
私の字でよければ、誰も代だなんて気づきませんから』って。そしたらお義母さん、私のを握って、『すまないねぇ、すまないねぇ』って、何度もをげたのよ」
最初のは、本当にそうだったという。 の末になると、叔母さんが賀状を買って本にき、祖母の横に座った。 祖母が「元気に暮らしています、といておくれ」「今も裏の畑でトマトが採れました、と入れておくれ」と言い、叔母さんがそれを丁寧にき取った。
「あのはね、お義母さん自が選んだ言葉だったのよ」
叔母さんはい目をして言った。
「『元気にしている』『畑仕事をしている』『配いらない』。そのつさえいてあれば、京の子供たちはして自分の活に専できるからって。……最初の頃は、私も本当に、親孝のお伝いをしてるつもりだったわ」
温かい話だった。 そこまでは、違いなく、美しい族のいやりだったはずなのだ。
「……じゃあ、どうして」
私は喉の奥がつかえるのをじながら、問いかけた。
「どうしてから、おばあちゃんには内緒でくようになっちゃったの? おばあちゃん、内障の術、結局受けたんでしょ? しは目も見えるようになって、もよりは落ち着いたはずなのに……どうしておばあちゃんは『もいてない』なんて言ったの?」
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叔母さんの表が、すっと凍りついた。 温もりのかけらも残っていない、徹な仮面のような顔に戻る。
「……茜ちゃん」
叔母さんは私から線を逸らし、作業の奥にあるスチール製の棚へ歩いていった。 棚の引きしから、冊の学ノートを取りす。 表には『母さん 誌』とマジックでかれていた。
「これ、見てごらんなさい」
差しされたノートを受け取り、ページをめくった。 そこには、几帳面な叔母さんの字で、びっしりと付と記録がき込まれていた。
『 朝、血圧160。内科へ連れてく。先から塩分を控えるよう言われるが、本は「漬物がないと飯がえない」と激。』 『 デイサービスの体験利用を勧めるが、「あんなボケ老が集まるところに私をかせる気か」と皿を投げられる。』 『 夜、トイレににわず廊を汚す。片付けようとすると「触るな!」と鳴られる。シーツ交換を拒否。』
ノートのページをめくるが、震えた。
「のよ」 叔母さんの声が、氷のようにたく響いた。
「お義母さん、ので転んで、を軽く打って入院したの。幸い事には至らなかったけど、そこから気に認能が落ち始めたわ。物忘れがひどくなって、自分がさっき言ったことも忘れる。でもね、プライドだけは倍にも倍にも膨れがったのよ」
叔母さんは作業台にをつき、俯いた。
「私は毎、朝昼晩と通ったわ。は畑と集荷で杯だから、介護は全部私の役目。事を作って、薬をませて、汚れた着を持ち帰って洗って……。でも、お義母さんは私に『ありがとう』なんて度も言わなくなった」
「……どうして」
「怖いからよ。自分が壊れていくのが怖くてたまらないから、番くにいるに当たるのよ。『おは私がくねばいいとってるんだろ』『私の通帳からを盗んだろ』『この棒猫』……何度言われたとう?」
言葉がなかった。 私のっている祖母は、いつも穏やかで、孫の私には優しくお遣いを握らせてくれる、品なおばあちゃんだった。 その祖母が、叔母さんにそんな言葉を浴びせていたなんて、信じたくなかった。 けれど、ノートに刻まれた々しい記録が、それが紛れもない現実であることを物語っていた。
「決定だったのは、のよ」 叔母さんは乾いた唇を震わせた。
「介護認定の調査員がに来たの。と私で、なんとか介護1を取って、週に度でもデイサービスにってもらおうとした。そうしないと、私の体が持たなかったから。……そしたらね、調査員が帰った、お義母さん、仏壇にあった湯呑みを私の元に投げつけて割ったのよ」
叔母さんの指が、自分のエプロンをく握りしめる。
「『おは私を施設に叩き込んで、このを乗っ取る気だ!』って叫んでね。『男や恵子に言いつけてやる! あの子たちはおと違って優しい! おみたいな酷な嫁に、私の面倒を見てもらう筋いはない! 私のに度と顔をすな!』って……」