"祖母は十二年年賀状を書いてない" 第5話
誰として、『お母さん、急に字が綺麗になったけど、どうしたの?』って話本かけてこなかった。誰として、『本当に自分でいたの?』って疑いもしなかった」
叔母さんは、嘲るようにく息を吐いた。
「莉央ちゃんみたいなさな子供ですら、目見て『字が変わった』って気づいたのに。実の子供であるあなた方は、、ただの度も疑問にわなかった。……違いますか?」
誰も、何も言えなかった。 男伯父さんも、母も、縛りに遭ったようにを真文字に結び、線を彷徨わせている。 畳に落ちた叔母さんの言葉が、あまりにもく、鋭く、全員の胸の真んに突き刺さっていた。
「毎毎、あのを見てした気になって……『今も母さんは元気だ、だから私は私の活を優先していいんだ』って、自分に言い聞かせていただけじゃないですか」
叔母さんはゆっくりとちがった。 紺のブラウスの裾をえ、乱れた髪を指先で払う。 そのち姿は、先ほどまでの「雑用係の嫁」ではなかった。 ですぎる荷物を背負わされ、それを放りす権利をようやくに入れたの姿だった。
「お義母さん」
叔母さんは、座でさく縮こまっている祖母を見つめた。 その声には、りも、憐憫も、もはや温もりすらも残っていなかった。
「お誕、おめでとうございます。
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お料理の精算は、入りで済ませておきましたから。……私、もう帰りますね」
「あ、おい、淳子……!」 叔父さんが慌ててちがろうとしたが、叔母さんは度も振り返ることなく、襖をぴしゃりと閉めて座敷をてった。
残されたのは、苦しい沈黙と、めきったすき焼きの脂の匂いだけだった。
誰もけない。誰も何も言えない。 男伯父さんはビールグラスを持ったまま固まり、母は青ざめた顔で畳を見つめている。
私は、畳のに置きりにされたのアルバムに線を落とした。 表に踊る『おばあちゃんの』という文字が、ひどく滑稽で、グロテスクなものに見えた。
これは、族の絆の記録なんかじゃない。 私たちが、のにすべてを押し付け、見ないふりをし続けてきた「怠と無関の記録」だったのだ。
ふと見ると、祖母が、震えるで自分の着物の膝のあたりを、何度も、何度も擦っていた。 その瞳から、ぽろぽろと粒の涙がこぼれ落ち、の着物に濃い染みを作っていく。
「……おばあちゃん」
私が息を呑んで駆け寄ろうとした瞬、祖母が絞りすように呟いた。
「……ごめんねぇ。……みんな、ごめんねぇ……」
その謝罪が、ちった淳子叔母さんに向けられたものなのか、それとも私たち子供たちに向けられたものなのか、そのの私には分からなかった。
ただ、このの平穏が、取り返しのつかない音をてて崩れったことだけが、痛いほどに理解できた。
崎内のビジネスホテルのは、微かな煙の残りと、の乾いたが吹きす音だけで満たされていた。
夜のを過ぎても、母・恵子はベッドので落ち着きなくスマートフォンを握りしめ、横浜の男伯父さんと話で声を荒らげていた。
「ええ、兄さん。信じられないわよね。まさかものものから全部、淳子さんの字だったなんて……。私、帰りののでずっと考えてたんだけど、あの子、絶対に何か隠してるわよ」
母は話に向かって、確信に満ちた調でにまくしてている。
「お母さん、ここ数、腰が痛いって理由で全然京にてこなくなったじゃない? あれも全部、淳子さんが『私が面倒見てますから丈夫です』って言って、私たちを実にづけないようにしてたのかも。認症がんでるのを隠して、お母さんの通帳を自由にかしてたんじゃないの? ……ええ、、絶対に本にって通帳も印鑑も全部させるべきよ」
私はベッドの端に腰掛け、母の横顔をただめた目で見つめていた。
宴席のの悪さは、脂っこい料理のように胸の奥にこびりついてれなかった。 母も伯父も、料亭であれほど淳子叔母さんに痛烈な反撃をらっておきながら、晩経つと、その屈辱を「嫁の審な企み」