"優しい教室で震える息子" 第16話
録音ファイルが保されたことを確認し、バッグに収める。
「の徒、その保護者、そして見学にいらっしゃる教育関係者の方々ので、どうぞ胸を張って、その素らしい『奇跡の支援システム』の成果を発表してください。私たちは、指定された最列の席で、言句聞き漏らさずに拝聴させていただきますので」
「あ、あの……野さん……!」
いつくばるようにを伸ばしてくる武田先に背を向け、私は度も振り返ることなく相談のドアをけた。
舎のにると、の乾いたが吹き抜けた。 空は青く澄み渡り、グラウンドでは体育の授業を受ける児童たちの元気な歓声が響いている。
バッグので、スマートフォンが激しく振した。
画面を見ると、保護者全体のLINEグループだった。 通をく。 発信者は、PTA学委員——浅井織だった。
『皆様、いつも温かいご支援をありがとうございます。今週曜の徳公授業について、武田先ともご相談し、素らしいサプライズを企画いたしました! これまで私たちのクラスが紡いできた「蓮君を支える奇跡の絆」を、全の皆様にっていただく最の会です。当は、子どもたちから蓮君への温かいメッセージカードの贈呈と、野様ご族からのご挨拶を予定しております。
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皆様、ぜひハンカチをご持参の、温かい拍でお迎えください!』
メッセージの末尾には、祈るようなと、満の桜と、何もの拍の絵文字が散りばめられていた。
続いて、別の保護者たちからの返信が滝のように流れてくる。 『素らしい企画ですね!』 『涙がそうです!』 『うちの子も、蓮君の力になれて本当に成しました!』
拍、拍、拍、ハートマーク。 タイムラインを埋め尽くす、無邪気で、おぞましい、自己陶酔の嵐。
私は歩にち止まり、たい指先で画面を見つめた。 りは、すでに限界を超えて、絶対零度の静寂へと変わっていた。
誰として、本当のことを見ようとしていない。 誰もが、自分が「素らしい物語」の登物であることに酔いしれている。 の痛みを燃料にして燃え盛る、醜悪な善の祝祭。
「……いいわ」
私はさく呟き、スマートフォンの源を落とした。
台はった。 主役、観客、演、そして脚本。 全てが揃っている。
曜の午。 あの教で、あなたたちが信じる「奇跡の美談」の仮面を、枚残らず引き剥がしてやる。
胸の奥底で燃える徹な炎を抱きしめながら、私は蓮が待つ自宅へと、力い取りで歩きした。
曜の朝、初のは容赦なくリビングのフローリングを照らししていた。
テーブルのには、昨夜のうちに用を終えた通のい封筒が、端を几帳面に揃えて積みげられていた。
郵便番号枠のない、の無の封筒。 その通通の表面に、席番号と児童の氏名が、夫の雅史の端正な万の文字で記されている。
には、ヶのにそれぞれの子どもが負担した百円の貨。 百円玉枚、円玉枚、円玉枚。 でわざわざ貨に両替してもらった、傷つないとの貨たちだ。 それに加えて、法定利息を回る利パーセント相当の端数を切りげた利息円、そして蓮が昨夜、自分の机で何もかけてさなメッセージカードに鉛でいたが入っている。
『今までありがとう。でも、もう丈夫です。野蓮』
それ以の言葉は何もかせなかった。 言い訳も、謝の過剰な修辞もいらない。ただ事実だけを伝える、歳の区切りの言葉だった。
「蓮、準備はいいか」
スーツのネクタイを締め直しながら、雅史が静かに声をかけた。 仕ての良いチャコールグレーのスーツに、アイロンの効いたいシャツ。 半、突然の事業所閉鎖でに取り乱していた男の姿はそこにはなかった。資系医療器メーカーの本統括マネージャーとして、何もの部を率いて々厳しい交渉のにっている、凛としたの男の顔だった。
子供部からてきた蓮は、指定の標準のポロシャツに紺のハーフパンツを履き、を落として磨きげたスニーカーを履いていた。