"優しい教室で震える息子" 第13話
レシートを調べていた、枚だけ、とはらかに異質な片があった。
付。 席番号番、島静。 のレシートには「蓮君へ」「美しくべてね」といった親しげなメッセージやいスタンプが押されていたのに、その枚だけは、名だけが震えるようない跡でかれ、余には何もかれていなかった。鉛の芯が途で折れたような、乱暴な圧の跡。
島静ちゃんの母親は、PTAの集まりでも滅に見かけない、パート勤めの親庭だと以聞いたことがあった。
スーパーの裏にあるクリーニングの受付に、そのはいた。 名札に『島』とある。 柄で、し疲れたような目元をした女性だった。
客が途切れたタイミングを見計らい、私はカウンターへ歩み寄った。
「あの……島さんでしょうか。突然すみません。組の、野蓮の母です」
島さんは驚いたように目を丸くし、それから私の顔をまじまじと見つめた。 その瞳にったのは、浅井織が見せたような甘ったるい同ではなかった。 微かな警戒と、そして「ついにこのが来たか」というような、苦い諦めのだった。
「……蓮君のお母さん、ですか。どうしてここへ?」
「静ちゃんのことで、しだけお伺いしたいことがあって参りました。ご迷惑でなければ、休憩におをいただけないでしょうか。
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蓮の費のことです」
『費』という単語をにした瞬、島さんの表が張った。 彼女は内の計をちらりと見げ、く息を吐いた。
「……あと分で昼休憩に入ります。裏のベンチでなら」
初の陽射しが照りつけるスーパーの搬入の脇で、私たちはコップのたい麦茶をに並んで座った。
私はバッグから、あののレシートを取りし、島さんに差しした。
「これ、静ちゃんのお名ですよね」
島さんはその片を目見るなり、苦々しそうに元を歪めた。
「……やっぱり、そのことですか」
「島さん。単刀直入にお伺いします。静ちゃんは、この百円を、自分の志でんでしたのでしょうか」
私の問いに、島さんは乾いた笑い声を漏らした。
「んで? 冗談じゃないわ」
その声には、押し殺してきたりが滲んでいた。
「あの子、泣きながら私に頼んできたんですよ。『お母さん、お願いだから百円ちょうだい』って。『さないと、私、クラスで血だって言われちゃう』って」
私の臓が、たく脈打った。
「……誰に言われたんですか?」
「誰って、学級委員の男の子たちや、浅井さんのところの悠君よ。あの子たちが毎、席番号順のチェック表を持って教のろにっているんですって。『は誰の番だ』『蓮君のためにちゃんと遣いを用してこい』って」
島さんはコップを指先でく握りつぶした。
「うちは母子庭で、贅沢なんてさせてあげられない。静ののお遣いは百円なんです。その半分以を、なんでの子の費に制に寄付させられなきゃいけないの? 私が『そんなのおかしい、担任の先に相談しなさい』って言ったら、静がなんて言ったといます?」
島さんの目が、悔しさに赤く潤んでいた。
「『武田先が番張り切ってるんだから、先に言えるわけないじゃん!』って叫ばれたんです。『先が毎朝のホームルームで、昨は誰々が蓮君を支えました、素らしいですね、って黒板に丸をつけてるんだよ。せないなんて言ったら、私が悪者になっちゃうよ!』って……」
の奥で、何かが激しい音をてて砕け散った。
子供たちの自発な善? 美しいいやりの奇跡?
浅井織が誇らしげに語っていた美談の裏側で起きていたのは、異論を切許さないファシズムだったのだ。 「友達を助ける」という絶対正義を掲げ、反論する者を「のない悪」として排斥する、最も湿で暴力な教の支配。
「野さん」 島さんが私を真っ直ぐに見据えた。その目には、責めるようなと、すがるようなが混ざりっていた。
「蓮君がなのは分かります。でもね、あの子がだからって、うちの子が自分のわずかなお遣いを巻きげられて、怯えなきゃいけない理由にはならないでしょう? の親御さんたちだって、みんな裏では愚痴を言ってますよ。